第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

多領域専門職部門シンポジウム

小児循環器看護

多領域専門職部門シンポジウム03(II-TRS03)
小児循環器看護に必要な看護実践の工夫

2020年11月23日(月) 16:00 〜 17:00 Track5

座長:井林 寿恵(京都府立医科大学付属病院 PICU)
座長:村山 有利子(聖隷浜松病院)

[II-TRS03-1] 手術治療の意思決定における患児の参加と患児への説明

中水流 彩 (千葉大学大学院 看護学研究科)

キーワード:先天性心疾患患児, 意思決定, 手術治療の説明

現在、先天性心疾患の治療技術は向上を続け、患児の生命予後は大きく改善し、成人期を迎える患者の数も着実に増加している。成人期治療の重要性が高まり、彼らの自立に向けた支援や早期教育が注目を集める一方で、出生前診断や胎児治療の普及、手術時期の低年齢化により、物心のついた患児が手術治療を体験し疾患を認識する機会は限られ、難しくなりつつもある。
先天性心疾患は、慢性疾患の一つでありながらも、急性期には深刻な症状を呈し侵襲の大きい治療を要する。生命に直結する手術治療の説明と合意は、疾患病態が重症であるほど早期より求められ、家族に委ねられるところから始まり、成人期の課題を残して将来的には患者自身が請け負う。生涯にわたり疾患を背負う患者自身の手術治療における参加は、成人では勿論、どんな幼少児においても不可欠である。医療における子どもの意思決定では、子どもの理解力に応じて分かりやすい言葉で説明し、子ども本人の意思を確認することが重要といわれている。
先天性心疾患患児は、疾患について十分な理解が難しい幼児であっても意思をもち、手術治療の体験を通して芽生えた知的探求心をもとに、疾患理解やセルフケア獲得に向けた準備性を高めている。また彼らは、自分なりに納得することで手術治療に対する主体的な反応を示し、親と相互作用する中でさらに知的探求心を高めている。手術治療の特性や疾患病態、成長発達の個人差からは、十分な理解や合意が難しいことも多く、患児がいつから、どのくらい、意思決定に参与できるのかは定かではない。しかし、疾患とともに絶えず成長発達を続ける患児の段階に合わせた説明と介入を行い、幼少期からの関心や理解を高め、手術治療における参加を促していくことが重要と考える。幼少期に手術治療を受ける患児自身が主体的に参加する力を、家族とともに育んでいく必要がある。