[II-YB03-5] 総動脈幹弁逆流に対する弁形成術の成績
キーワード:総動脈幹症, 総動脈幹弁逆流, 弁形成
【背景・目的】総動脈幹弁逆流(TrR)に対する弁形成術は、疾患自体が稀少な上に弁の異形成が高度なため術式の標準化が困難である。当院の治療戦略としては自己弁組織を温存するsuture valvuloplastyから弁組織を切除・再建する高度な弁形成へと変遷してきた。当院の成績を報告する。【対象】1981-2019年の総動脈幹症根治術60例のうち、総動脈幹弁形成術を施行した10例。平均観察期間7.1年(0.1-20)。【結果】Van Praagh分類はA1:2例、A2:3例、A4:5例。弁尖数は2尖2例、3尖4例、4尖4例。TrRはmild 4例、moderate 3例、severe 3例。primary repair 4例(月齢中央値3.6、体重中央値4.8kg)、staged repair 6例(月齢中央値4.9、体重中央値6.0kg)であった。術式は以下の通り。<自己弁温存型>弁尖縫合3例(症例1:3尖弁を2弁化、症例2:4尖弁を2弁化、症例3:4尖弁を3弁化)、2尖弁に対する交連縫縮1例(症例4)、2尖弁に対するcentral plication1例(症例5)。<高度弁形成>4尖弁の低形成な1弁を切除+弁輪再建2例(症例6、7)、3尖弁に対する弁尖延長2例(症例8、9)、3尖弁の低形成な1弁を自己心膜で置換1例(症例10)。結果は在院死亡が2例あり、いずれも初期の症例であった(症例2:高度弁逆流残存+肺炎、症例3:術前から肺出血あり術後にPH crisis発症)。再手術は1例であった(症例10:置換した弁尖に血栓形成あり人工弁置換へ)。最新のTrRはmild以下6例(症例1、4、6、7、8、9)、moderate 1例(症例5)であった。平均観察期間7.1年での累積生存率80%、再手術回避率90%であった。【結語】弁形態に応じた適切な術式選択により総動脈幹弁形成術の成績は向上しつつある。症例の蓄積と弁形成手技の確立が望まれる。