[III-OEP09-1] Fontan術適応患者における横隔神経麻痺合併が遠隔期の血行動態に与える影響
Keywords:Fontan循環, 横隔神経麻痺, 体肺動脈側副血管
【背景】Fontan手術の適応となる血行動態において, 横隔神経麻痺 (PNP) 合併がFontan循環不全の危険因子となることが報告されている. 今回我々はFontan術前の横隔神経麻痺合併が遠隔期の血行動態に与える影響について検討した.【対象・方法】2000年1月から2009年12月までの9年間に当院でFontan手術を行った74例のうち, 術後10年以降に当院で心臓カテーテル検査を評価し得た35例を対象とし, 横隔神経麻痺合併の有無, 体肺動脈側副血管 (APCAs) に対して塞栓を行ったcoil数, 平均肺動脈圧 (PAp) を比較した. Fontan術後に片側の肺動脈が閉塞した2例は除外した. 【結果】検討を行った33例は男女比は0.73で, 右室型単心室9例, 左室型単心室15例, 2心室で心室内修復術困難な症例が9例であった. 術式については一期的Fontan術が1例, fenestrated Fontan術が1例であった. Fontan術実施月齢の中央値は27か月 (16-67か月), カテーテル実施年齢の中央値は12歳 (10-20歳) であった. PNP合併例は9例 (25.7%) で 右側麻痺が7例, 左側麻痺が2例, 両側麻痺例はなく, 気管切開となった症例もなかった. PNP合併例では左PNP合併で麻痺から自然回復した1例を除き, 8例で横隔膜縫縮術が行われた. またFontan術後遠隔期にcoilを追加した症例はなかった. 現在までにPLEを発症した症例はなく, 1例はカテーテル実施以降に鋳型気管支炎のため死亡した (PNP非合併例). PNP合併例のPAp (中央値 15mmHg (11-20)) は非合併例のPAp (12mmHg (6-16)) に比較して有意に高値で (p=0.026), APCAs塞栓に要したcoil数も多い傾向にあった (PNP非合併例の中央値6個に対し合併例14個) が有意差は認めなかった. またPNP例では健側 (0個 (0-7))に比べ患側 (7個 (0-21)) に有意に多いcoil塞栓を必要とした (p=0.030). 【結論】PNPは患側のAPCAsを増加させ, 遠隔期のPApを上昇させうる.