第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

優秀演題

心不全

優秀演題11(III-OEP11)
小児心不全薬物治療ガイドラインUpdate

2020年11月24日(火) 17:00 〜 17:30 Track3

座長:村上 智明(札幌徳洲会病院)
座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科新生児科)

[III-OEP11-1] 乳児DCM管理における前後負荷評価の重要性

原 卓也, 石川 友一, 倉岡 彩子, 兒玉 よしひこ, 中村 真, 佐川 浩一 (福岡市立こども病院)

キーワード:乳児拡張型心筋症, ESWS, 前負荷

【背景】乳児DCMはRAS系阻害薬やβ遮断薬の導入による回復が期待されるが、補助循環導入判断が後手に回り不幸な転帰をとる場合も多い。【目的】乳児DCMに早期より補助循環適応とすべき所見がないか探索した。【方法】2005年~2019年に当院で経験した乳児DCM9例の心機能を後方視的に比較した。詳細に経過を追えた5例はその推移も比較した。前負荷は%LVDd(UCG)、後負荷はESWS(End Systolic Wall Stress)を指標とした。【結果】年齢0.6±0.4歳、男:女=2:7例、全例心不全症状を呈し初診時CTR 69±1.9% , LVDd 178±22%, LVEF 29±8%であった。人工呼吸管理4例、DOA6例、DOB1例、PDEIII阻害剤8例で使用した。全例経口薬物療法が導入されたが、1例のみACE阻害薬開始に伴いショックから心肺停止となり補助循環導入後に死亡した。改善例との比較では、初診時EF(28.6±8.3 vs 27.0%)・収縮期血圧(69.1±8.5 vs 75)に差はなかったが%LVDd(173±19 vs 211%)およびESWS(n=5)、 84±41 vs 186g/cm2が高値であった。さらに改善例では急性期治療に伴いESWS低下(95 → 75g/cm2)と併行して%LVDd(163→168)が増大したうえで慢性心不全治療が開始されたが、死亡例ではESWS(186→186g/cm2)%LVDd(203→200)とも不変なままACE阻害薬が導入されていた。【考察と結論】ESWS高値例では血圧維持作用における前負荷の影響を増大させた上で経口心不全治療薬を導入せねば、過度の降圧からショックに至る可能性がある。前負荷代償に余裕がなく後負荷を十分下げられない症例では早期から補助循環を用いる必要があるかもしれない。