パネルディスカッション08（III-PD08）
フォンタン循環破綻

[III-PD08-2] 門脈体循環シャントを有するフォンタン循環：Failed Fontanの一病像

^○永田 弾¹, 坂本 一郎², 福岡 将治¹, 石北 綾子², 長友 雄作¹, 平田 悠一郎¹, 山村 健一郎¹, 大賀 正一¹ (1.九州大学病院 小児科, 2.九州大学病院 循環器内科)

Keywords:フォンタン, 門脈体循環シャント, 高心拍出

【背景】門脈体循環シャント（PSVS）は稀な血管奇形であるが、様々な重篤な合併症を引き起こす。PSVSと先天性心疾患の関連は言われているものの、フォンタン循環とPSVSの関連性についてはまだ論じられていない。今回の研究はPSVSを有するフォンタン患者の臨床的特徴について検討することである。【対象と方法】2011年から2019年において九州大学病院成人先天性心疾患外来でフォローアップされたフォンタン患者213例のうち、18歳以上で心臓カテーテル検査を行った139例を対象とし、診療録から後方視的に臨床経過や各種検査（血液検査、心エコー、心臓カテーテル検査）所見を抽出した。【結果】139例中11例がPSVSと診断された。心臓カテーテル検査時の年齢は中央値25 (範囲 18ー45) 歳でフォンタン手術から22 (16ー35) 年が経過していた。10例が慢性心不全を呈しており[New York Heart Association class 2 (n = 5) and 3 (n = 5)]、経皮的末梢酸素飽和度は87(70ー95)%であった。心臓カテーテル検査では、心係数(CI)は5.3 (2.72ー14.3) L/min/m²] 、中心静脈圧(CVP)は18 (9ー25) mmHgであった。肺血管抵抗の上昇はなかったが、体血管抵抗は低下していた[7.08 (1.74ー18.6) Wood単位]。CVP 15mmHgとCI 3L/min/m²を基準として4群に分類すると、PSVSを合併した11例中8例が高中心静脈圧(＞15mmHg)かつ高心拍出(＞3L/min/m²)の群に属しており、そのうち2例は経過中に心不全、肝不全で死亡した。【結論】PSVSを有するフォンタン患者は抗中心静脈圧かつ高心拍出の状態にあり、PSVSの存在が長期予後に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。