[III-PD09-1] 【基調講演】集約化の制度設計:「患者と医師の安全、医療の継続性」を実現するために
キーワード:次世代育成, 集約化, 働き方改革
過去3回のシンポジウムにおいて次世代育成に関する議論が深まるなか、「新生児期から成人期まで長期に渡り継続的に、質の高い医療を提供する為には、切れ目のない次世代育成が必要であり、その為には施設の集約化を目指す必要がある。」との結論に至った。アンケート調査結果から、小児心臓外科医の労働環境や外科医1人あたりの手術症例数には「施設によって大きなバラツキがある」ということが確認された。小規模施設では医療者の勤務時間は長く、当直回数も多く、しかも経験症例数は少ない。働き方改革が進む中、現状の勤務時間を継続することは認められず、逆に働き方改革に則って勤務時間を減少させて、現在の小児循環器医療の質を維持することは絶対に不可能である。「医療の質」を維持しながら「働き方改革」と「次世代育成」を実現させるための制度設計を考えてみる。手術に参加する外科医:3名、病棟と外来の当番医:1~2名、当直医は翌日帰宅しなければならないと考えると小児心臓外科医は5~6名(指導医2名、専門医2名、専攻医1~2名)のチーム編成となる。通常その2倍の小児循環器科医が勤務し、小児集中治療医、麻酔科医、臨床工学技士等のコメディカルスタッフからなるチームが必要となる。このチームが効率よく機能するためには年間手術症例数200例以上(平日1日1例以上)の施設を目指すことになる。わが国の年間先天性心疾患症例数が約9000例であることを考えると目標とする施設数は40~50施設となる。NCDデータベースによると、わが国では120施設で先天性心疾患手術が行われており、年間手術症例数50例以下の施設が全体の59%を占めている。現実は「集約化とは程遠い状況」である。「先天性心疾患手術を行う施設の集約化」を進めていくために解決すべき問題点は多い。しかし、「医療者の安全と次世代育成」、「患者さん達への質の高い医療の提供」を実現するために学会として大きく舵を切っていく必要がある。