[III-PD09-2] 次世代育成制度の構築ー行政との交渉上の課題について
「事象1」日本は、急激な少子化と(高齢者/働き手)比率の増加を伴う人口減少社会(税収は減、社会保障費比率は増)に直面している。少子化については、1980年代に2800万人だった15歳以下人口が、今年2020年は1456万人と約半分、10年後はさらに250万人減り1203万人と予想され、小児医療関係者にとっては勿論、日本にとっても極めて重要な問題である。が、小児関係医療・福祉費は5%前後と小さく、圧倒的な比率を占める高齢者対策に追われ、2時間の地域医療構想会議でも小児の話題は5分未満という現実がある。「事象2」2年前、厚労省の事務官に「人口100万人あたりの小児心臓血管外科手術は約70件(成人は約1000件)で、医療の質、働き方改革、次世代育成も担いながら継続性を担保できる規模は年間200件と考えており人口300万が必要である。現状は9割弱が200件未満の施設で過剰労働環境にあり、小児心臓外科医は絶滅危惧種である」ことを説明し、「学会としては、まずは集約対象となる小―中施設に勤務する小児心臓外科医の双方向手術支援体制を構築し、混乱を回避しながら段階的に集約化を実現することを目指している。少子化が進むなかで絶やしてはならない小規模高度医療を維持するためのパイロットスタデイとして財政支援をお願いできないか」と相談したところ、「公的資金・税金を投入するので、公益性とその説明責任(小児心臓外科を選択することが、なぜ公益に資するのか)」を求められた。「考察」日本小児循環器学会は“小児循環器学”を通して社会に貢献する目的で認定された特定非営利活動法人であり、エキスパート集団として行政に当学会が関連する政策を提案する権利と義務がある。そのうえで、公的資金の投入を要請するにあたっては、公益性とその説明責任に熟慮が必要と考える。