The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

川崎病

シンポジウム07(III-S07)
川崎病「新しい日本のガイドラインが目指すもの」

Tue. Nov 24, 2020 8:30 AM - 11:00 AM Track3

座長:髙橋 啓(東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科)
座長:小林 徹(国立成育医療研究センター 臨床研究センター企画運営部)

[III-S07-5] 成人期川崎病診療体制の課題と連携体制の構築

三谷 義英 (三重大学 大学院医学系研究科 小児科学)

Keywords:川崎病, 移行医療, 冠動脈障害

川崎病に伴う冠合併症例では成人期に至るまで虚血性心疾患のリスクを伴うことから、生涯に渡る医療的管理が必要である。 1967年に報告されて以来50年余りが経過し、総川崎病既往者298,103名(2014年現在)中、成人例が136,960名と約半数に達する中、要治療経過観察の川崎病冠後遺症合併成人の累積患者数は日本全国で約15,000名(人口の約0.01%)とされる。急性期治療の進歩にも関わらず、成人への移行医療に抗血栓療法の継続を要する可能性の高い中等度以上の冠動脈瘤は、現在の新規発生率は100~150人(2-3人/0-4歳人口10万人/年)とされている。一方、川崎病既往冠合併症患者が、思春期、若年成人世代(AYA世代)に至り、内皮障害、慢性炎症、冠動脈壁異常を伴うことが報告され、成人期の予後が危惧される。実際、年間約100名の川崎病性急性冠症候群が発生するとされ、40歳未満の若年性心筋梗塞の5-9%を占め、今後,若年成人の虚血性心疾患の原因として重要になると予想される。しかし、成人期の川崎病既往者の冠イベントの診療実態は不明であり、また成人期に心筋梗塞を来した例の約半数は診療離脱例とされ、さらに一般成人の冠動脈粥状硬化と病理学的に異なると報告されている。以上から、川崎病既往成人の冠後遺症は、希少であり病態が不明で、有効な治療法が未確立であり、その実態解明によるエビデンス創出が、川崎病既往成人の診療の最適化、標準化に必須である。その為には、川崎病冠後遺症に関わる小児期ら成人期に繋がる関連学会の既存データベースを連携の下に活用し、臨床像(自然歴、冠イベント、薬物療法、カテーテル治療、外科治療の成績)、疫学像(診療実態と医療費)、病態(病理所見、冠動脈画像)の解明が重要と考えられる。 本講演では、小児期から成人期の本症に関わる学会の連携した取り組みの現状と課題に関して報告する。