[III-S08-1] ガイドラインからみた小児薬物心不全治療薬 ~最新ガイドラインレビューとこれからに期待する事~
Keywords:小児心不全, ガイドライン, 薬物治療
2015年に小児心不全薬物治療ガイドライン(JSPCCS)が改定され5年が経過した。この間ACC/AHA(2017)やESC(2016)の心不全に関するガイドラインが改定され、その流れを汲み日本で2017年に急性・慢性心不全診療ガイドライン(JCS/JHFS)が作成され、先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(19学会合同2018年改訂)も提示された。これら最新のガイドラインをレビューし、それを踏まえ、日本の小児心不全治療の現状と課題、今後の小児心不全ガイドラインの改訂に期待される事を考えたい。日米欧では、急性と慢性の心不全診療が1つのガイドライン上にまとめられ、心不全の細分類(HFrEF、HFpEF等)とともに、心不全ステージ分類を用い、適切に治療介入を行う事を目的とし、アルゴリズムやフローチャートが作成されている。急性心不全の薬物治療目標は、問題となる血行動態の改善であり、慢性心不全の治療目標は予後の改善である。収縮機能障害による急性心不全に対し、強心薬にて急性増悪状態を脱したら可能な限り減量中止し、速やかにACE阻害薬やβ遮断薬などの心保護薬を開始する流れであり、小児領域でもその概念が普及しつつある。日本においても小児心不全治療の課題として、心不全となる基礎疾患のバリエーションが多い為EBMの確立が難しい、施設よって心不全治療の経験に差異があり治療方針が多様である、等があり、今後多施設共同によるエビデンスの蓄積が期待される。これからの心不全治療薬として、小児に対する臨床試験が行われているトルバプタンや、既に欧米ガイドラインに有効性が示されているアンギオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬(ARNI)が期待される。また、sGC活性化薬や心筋ミオシン活性化薬などが欧米ガイドラインでの位置づけが期待される。JCS/JHFSのガイドラインには身体所見から緩和ケアに至る幅広い範囲まで記載されており、改訂の際に付け加えられることも期待したい。