[III-S08-2] 先天性心疾患の慢性心不全治療-心保護薬のエビデンス
キーワード:先天性心疾患, 心不全, 薬物治療
心不全の急性期には症状・症候の改善を目標として、病態を把握した上で血行動態を改善する薬(カテコラミンや利尿薬等)を使用する。血行動態を改善する薬は必ずしも予後を良くする薬剤ではなく、漫然と投与すると予後に悪影響を及ぼすこともある。一方、予後を改善する薬(成人で使われるベータ遮断薬やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の遮断薬等)は導入することで必ずしも見た目の血行動態は良くならないあるいは一時的に悪くなることすらある。予後を改善する薬の効果判定は大きなrandomized control trial(RCT)等によってなされるべきであるが、先天性心疾患においては予後改善薬の効果判定に関するstudyが少ない。 本学会の小児心不全薬物治療ガイドラインが2015年(平成27年)に改訂されてから5年が経過した。改定後の2016年にAmerican Heart Association(AHA)から先天性心疾患に関する慢性心不全治療のstatementが発表された。そのstatementでは先天性心疾患では薬物治療による予後改善効果の確固たる根拠に乏しいことが明確に記載され、薬物の副作用に留意することが強調されている。実際にその後発表された先天性心疾患の慢性心不全治療薬に関する幾つかのstudyをみても有効性を十分に示した薬剤はない。 この5年間に発表された薬剤による先天性心疾患に対する心保護治療のデータについて概説する。