The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

成人先天性心疾患

シンポジウム09(III-S09)
成人先天性心疾患「移行の実際ー移行はどのように行われ始めているかー」

Tue. Nov 24, 2020 3:00 PM - 5:00 PM Track4

座長:三谷 義英(三重大学大学院 医学系研究科 小児科学)
座長:八尾 厚史(東京大学)

[III-S09-2] 患者の視点から見た移行医療

山口 美はと (全国心臓病の子どもを守る会)

Keywords:患者会, 成人先天性心疾患, 社会的課題

<全国心臓病の子どもを守る会と先天性心疾患医療の進歩>全国心臓病の子どもを守る会(以下守る会)は、1963年に創立され57年になる。この年月「命を救いたい」という医療者の強い思いと、「救ってほしい」と願う患者家族の強い思いがあった。守る会は先天性心疾患の医療とともに歩んできたともいえる。創立当初は救えなかった子どもたちも、医療の進歩により、救命率は飛躍的に上がった。救命率が上がると術後遠隔期の問題が浮かび上がってきた。こども病院に通院している患者のなかには、いずれ病院をかわらなければならないという心配も出てきた。同時に、「成人先天性心疾患」の問題が認識されるようになり、会としても、機関誌「心臓をまもる」などで周知して、「移行医療」の重要性についても語られるようになった。<移行医療の現実と課題>守る会が2018年に実施した「生活実態アンケート」の結果や会員の事例に基づき、以下3つに分けた患者の現状と社会的課題を考察し、よりよい移行医療に期待をこめたい。1.「定期的な経過観察が必要な患者」…軽症といわれている疾患や、指定難病に疾患名が入っていても治療の必要がない患者が多くいる。1年に1回から数年に1回の経過観察は必要だが、通院をドロップアウトしてしまう患者がおり、その危険性を伝える必要がある。2.「専門医による継続的な診察、治療が必要な患者」…重症(複雑)な心疾患では、成人期以降の後遺症(合併症・遺残症・続発症)の問題があるが、適切に移行する施設や専門医が少ない。障害者手帳を取得していない患者もいる。また、就労支援も必要である。3.「専門医による継続的な診察、治療が必要で重複障害のある患者」…心疾患以外に染色体異常、肢体不自由がある場合には、他科に受診しているため、移行医療が困難。通所施設など福祉的支援が必要である。