[OR01-4] グレン循環における体肺動脈側副血管の発育とその背景についての検討
キーワード:体肺動脈側副血管, グレン循環, 単心室
【背景】Glenn術(BDG)後患者には少なからず体肺動脈側副血管(APCA)が存在するが、その程度は症例によって大きく異なる。過剰なAPCAは心室容量負荷や肺動脈圧上昇、Fontan手術(F術)後胸水の原因になる。【方法】対象は2015年1月~2018年12月に当院でF術を行った連続87例。F術前カテーテル検査の大動脈造影を用いてAPCAを10段階にスコアリング(APCA score)し、診療録から得られた患者背景との関連を検討した。【結果】APCA scoreは平均3.59点。基礎疾患は左心低形成症候群および類縁疾患23例、左室性単心室34例、右室性単心室24例、その他6例。肺動脈形態は肺動脈閉鎖25例、肺動脈狭窄22例、肺動脈狭窄なし40例であり、PA Indexは平均270.9mm2/BSAであった。肺動脈に対する初回手術介入方法は主肺動脈絞扼術16例、両側肺動脈絞扼術20例、体肺動脈短絡術38例、BDG9例、primary Norwood手術4例。BDG時平均1.1歳、BDG後SpO2平均85.6%、BDG後F術前カテーテルまでの期間は平均408.2日で、その時点での肺血管拡張薬(PVD)使用は20例であった。APCA scoreと、基礎疾患、肺動脈形態やPA Index、初回手術介入方法、BDG後SpO2、BDG後期間との関連はなかったが、PVD使用群は未使用群に比べ有意にAPCA scoreが高かった(4.1vs3.4,p=0.02)。また、PVDの使用は、PA IndexやBDG後SpO2との多変量解析においてもHigh APCA score群(score≧4点)に対するリスク因子であった(OR 4.38,95%C.I 1.18-16.30,p=0.027)。【結論】本検討では、Glenn術後特有の肺循環や低酸素血症を反映する因子とAPCAの程度との関連は明らかではなかった。PVDの使用がAPCAの発育を促す可能性はあるが、PVD使用例の背景にも注目すべきであり、今後もAPCAの多い症例の臨床像を明らかにすることで、F術までの管理に役立ていきたい。