[OR03-2] 胎児診断された重複大動脈弓・血管輪に対する造影CTを用いた手術適応評価
キーワード:重複大動脈弓, 血管輪, 手術適応
【背景】重複大動脈弓による血管輪は、出生直後から高度の呼吸症状で発症する症例や乳児期に呼吸障害、嚥下障害で発症する疾患である。従来はまれな疾患と考えられていたが、近年、胎児診断症例が増加し、頻度の多い疾患であることが分かってきた。以前は診断時点ですべて手術介入の方針が取られていたが、多くが無症状で経過することが明らかになってきており、重複大動脈弓による血管輪に対する治療方針の再検討が必要と考えられる。【目的】重複大動脈弓・血管輪の手術適応を明らかにすること。【対象と方法】2013-2019年に当院で周産期管理を行った重複大動脈弓・血管輪の胎児診断例10例を対象とした。後方視的に出生後の造影CTを含む診療情報を得た。気管の血管輪に囲まれた最狭部と周辺の参照部に対して、矢状断・冠状断で気管径を計測した。aを最狭部、bを参照部の矢状断気管径×冠状断気管径と定義し、比較検討を行った。【結果】10例(男7 例、女3例)のうち、出生後に喘鳴、酸素化不良を認めた有症状例が1例、無症状群が9例であった。有症状の1例は日齢6で準緊急手術を行った。無症状群のうち、待機手術を行ったのが7例(手術月齢0.8-3.8)、保存的に経過観察をしたのが2例であった。有症状の1例はa/b:0.189、無症状群はa/b:0.602±0.086であり、明らかに有症状例で低かった。無症状群のうち、出生後に左側大動脈弓の血流途絶を認めたものが4例(うち2例が経過観察例)認めた。4例の途絶群のa/b:0.557±0.040、5例の途絶をしなかった群はa/b:0.638±0.036であり、有意差を認めなかった(P=0.697)。10例のいずれも遠隔予後は良好であった。【結語】出生後のCTで計測された矢状断・冠状断の最狭部気管径は、無症状群と比較して有症状例で狭かった。また無症状の場合、左側大動脈の血流途絶の有無にかかわらず、手術介入なしに良好な予後が得られる可能性がある。今後のさらなる症例の蓄積が望まれる。