[OR12-1] 新生児期の低酸素濃度ガス吸入療法 ―胎児診断との関連―
キーワード:肺血流増加型先天性心疾患, 低酸素ガス吸入療法, 胎児診断
【背景】低酸素濃度ガス吸入療法(N2療法)は、肺血流増加型先天性心疾患の新生児期に肺血管抵抗を増加させる目的で施行する姑息的管理法で、2018年4月より保険収載された。【目的】保険収載後に当院で施行されたN2療法の有効性と安全性について調査した。また胎児診断の有無との関連を検討した。【方法】2018/4/1から2019/12/31に当院でN2療法を施行した肺血流増加型先天性心疾患の新生児を対象とし、診療録より後方視的に調査検討した。【結果】症例は23例で、男児10名、女児13名、出生体重は中央値2690(範囲1774-3316) g、在胎週数38(31-41)週であった。胎児診断症例(F群)は14例で、院内出生13例は全てF群であった。主要診断は両大血管右室起始5例、完全型房室中隔欠損4例、左心低形成3例、完全大血管転位3例で、うち大動脈縮窄、離断合併12例、機能的単心室10例であった。PGE1製剤使用は19例。4例がショック状態を経験した。N2療法開始時期は生後1(0-29)日、施行期間4(0-12)日、方法は気管内挿管7例、ハイフローネーザル4例、鼻カニューラ12例であった。手術時日齢は6(3-35)日であった。手術は両側肺動脈絞扼術12例、主肺動脈絞扼術4例、大動脈再建手術4例、心内修復手術7例であった(重複あり)。全例待機的に手術に到達したが、術後に2例を失った。短期的に有害事象を認めた症例はなかった。F群は非F群に比べ術前ショックがなく(0 vs 4例, p=0.014)入院時日齢が早く(中央値0 vs 4日, p=0.0001)、N2療法開始日齢が早く(1 vs 7日, p<0.0001)、N2療法使用期間が長く(5.5 vs 3日, p=0.031)、手術日齢が早かった(5 vs 10日, p=0.035)。【考察】保険収載後の当院での肺血流増加型先天性心疾患に対するN2療法は有効で安全に施行された。胎児診断による計画的N2療法でより安全な術前管理が施行され、予後改善が期待できる。