[OR12-3] 心室中隔欠損症術後における一酸化窒素(NO)吸入療法施行例の検討
Keywords:inhaled nitric oxide, pulmonary hypertension, congenital heart surgery
【背景】2015年よりNO供給装置が心臓手術の周術期における肺高血圧において保険適用となり、臨床的な有効性を疑う余地はない。術前カテーテル検査結果等から術後NO吸入療法を必要とするか予め予測できることが多いが、予測に反することもしばしば経験する。【目的】肺高血圧を伴う心室中隔欠損症(VSD)において心内修復術後にNO吸入療法が必要となる患者因子を検討する。【対象と方法】2015年12月~2019年12月に当院で一期的に心内修復術を施行したVSD症例46例を対象とした。術後NO吸入療法群(N群)9例とNO非使用群(C群)37例に分け、診療録を用いて後方視的に検討した。心房中隔欠損症及び動脈管開存症以外の心疾患合併例、肺体血流比1.5未満の症例(大動脈弁逸脱)、染色体異常が判明している症例は対象外とし、NO吸入療法に影響する可能性のある因子について単変量解析を行った。【結果】年齢は中央値N群2か月(1~4か月)、C群3か月(1~58か月)、体重は中央値N群4.2kg(3.1~4.7)、C群4.6kg(3.0~10.7)。NO吸入療法に影響する因子として、肺血管抵抗(以下Rp、中央値N群1.99 C群1.54)、肺体血圧比(以下Pp/Ps、中央値N群0.79 C群0.44)、人工心肺時間(以下CPBT、中央値N群110分 C群103分)が有意(p<0.05)であった。オッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ2.13(1.07-4.24)、1.59(1.08-2.36)、7.33(1.06-50.62)であった。年齢、性別、体重、平均肺動脈圧、肺体血流比は有意でなかった。【考察】術前の高肺血流によるRpの上昇が術後の血行動態に大きく影響していることは明らかであるが、CPBTも術後の肺高血圧に影響を与えていることが示唆される。ただし対象症例数が少なく単変量解析のみの分析となったため、今後症例の蓄積により多変量解析を行う必要がある。【結論】術前のRp高値の症例に加えCPBTが比較的長くなった症例は術後NOを積極的に導入することで安定した周術期管理を行える可能性がある。