[OR13-1] 小児肥大型心筋症の急激な壁厚増大は不整脈のリスク因子、新規リスクモデルの修飾因子となる可能性がある。
キーワード:肥大型心筋症, 突然死予防, リスクモデル
【背景】肥大型心筋症(HCM)は突然死予防の進歩により今やTreatable genetic diseaseとさえ呼ばれるが、そのためのリスク評価は小児では未熟である。2019年JAMAに小児リスクモデル(HRK)が発表され、応用が期待される。【目的】新規リスクモデルの有用性検証と問題点検索。更に問題解決の補助となる新規リスク修飾因子の探索。【対象と方法】対象は当科初診時16歳以下のHCM21例。HRKは5年間の突然死を予測するもののため突然死関連イベント(SCDE)抽出は22歳までとした。SCDE陰性群と陽性群でHRK値、心エコーでの最大壁厚(WT)と、その年変化の最大値(WT/年)、左房径(LAD)を比較した。値は平均±SDで表記。比較にはWilcoxon testを使用。アウトカムの予測能評価にはROC分析を使用。P値は0.05以下を有意とした。【結果】対象年齢は10.4±5.3歳。SCDEは心室頻拍/細動(VT/Vf)4例、房室ブロック1例、無脈性電気活動2例、HCMとの関連不明な心肺停止1例。比較は陰性群v.s.陽性群でそれぞれHRK値(%/5年)3.5±1.8 v.s. 5.0±1.6(p=0.04)、WT(mm)12.7±4.4 v.s. 15.2±5.7(p=0.35)、WT/年(mm/年) 0.6±0.8 v.s. 2.6±2.8(p=0.03)、LAD(mm) 26.3±7.0 v.s. 29.7±8.9(p=0.26)、またWT/年の中ではVT/Vf陰性群v.s.陽性群で、0.6±0.8 v.s. 4.4±2.9(p=0.01)だった。VT/Vfを予測するカットオフ値は2.6mm/年の壁厚変化だった。【考案】HRK値は有意差あるもSCDEの累積発生が増加する6%/5年以上のものは陰性、VT/Vf群に1例ずつ見られた。両例とも厚い壁厚がモデル式に影響したと考えられた。一方でWT/年は陰性例1.2 mm/年、VT/Vf例2.7 mm/年と2倍以上の差があり2.6mm/年を跨いでいた。WT/年は新規リスクモデルを補足出来る可能性を示した。