[OR13-3] シャーガス慢性心筋炎の病態形成機構
キーワード:心筋炎, トリパノソーマ , シャーガス病
【背景】病原体排除が成立しない持続感染を背景とする病態においては、炎症誘導の「始点」としての宿主細胞-病原体相互作用、免疫細胞によって指揮される炎症慢性化の「維持」機構、これら両要因の寄与度の理解が十分でない。疾病の治療標的を病原体に置くのか、過剰に活性化した免疫を抑えるべきなのか、いまだ定まらない。【目的】病原体の慢性持続感染を原因とする慢性心筋炎を解析モデルに、炎症慢性化を誘導、維持する要因を再定義する。【方法・結果】トリパノソーマ原虫心臓感染症であるシャーガス病をin vitroで再現し、持続感染状態における宿主-病原体相互作用を細胞ベースの実験系で解析した。遺伝的背景の異なる3系統のトリパノソーマ原虫を強毒株、弱毒株に分類した。さらに、重症度と相関する宿主因子を探索した。【考察】持続感染が宿主応答を誘導し、免疫を介さずとも病態を自律的に駆動する、という仮説を支持する予備的知見を得た。シャーガス病の症例対照研究、媒介昆虫・臨床例からの分離原虫の分子疫学研究など、流行国エルサルバドルで我々が展開する国際共同プロジェクトの成果を、このin vitro病態モデル解析と統合することで、シャーガス病に固有の病原因子に迫りたいと考えている。