[OR13-4] 当院における結節性硬化症の心合併症とその経過、Everolimusの効果判定
キーワード:結節性硬化症, 横紋筋腫, エベロリムス
【背景】結節性硬化症(TSc)は、9番染色体上のTSC1、16番染色体上のTSC2の機能喪失変異により細胞増殖に関わるPI3K/AKT/mTORシグナル伝達系の制御機構の破綻からmTOR複合体の異常活性化がおこり、細胞増殖や血管新生、細胞代謝等を促進し、てんかんや精神運動発達遅滞、自閉症などの異常行動や、全身(脳・腎臓・肺・心臓・皮膚・眼球)に過誤腫が形成される神経皮膚症候群である。疫学的頻度は6000人に1人、遺伝形式は常染色体優性で孤発例が約60%とされている。mTOR阻害剤であるEverolimus(EL)が上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)や腎血管筋脂肪腫(腎AML)の合併例に保険適応となっている。心横紋筋腫(心RM)は乳児の50%以上に認められ多くの場合自然退縮するが、閉塞性の病態や不整脈で致死的経過を辿る場合もある。【目的】当院での結節性硬化症の心合併症と経過について調査し、EL導入例の心合併症の経過を評価する。【方法】2015年~2020年に当院小児科に受診歴のある結節性硬化症の未成年患者の経過を後方視的に調査する。【結果】受診歴があるのは20例(0~16歳、中央値8歳)であり、12例(60%)に心RMを、うち3例(15%)に不整脈(SVT, PVC, AVB)を認めた。1例はEL導入により心RMの退縮を認め、外科的介入を回避できた。抗不整脈薬を使用した2例は内服を中止できた。ELが導入されている8例(40%)のうち(1~13歳、中央値9歳)、心RMを6例(30%)に、不整脈を1例(5%)に認め、いずれも合併症なく腫瘍の退縮、不整脈の消失を認めた。EL導入中に、腎AMLの増大のため3例(15%)でELを中止した(9~13歳、中央値12歳)が、同3例では生下時に認めた心RMはEL前には痕跡化していた。【考察】単一施設で症例数も少ないが、心RMは全例退縮傾向で、EL投与群と非投与群で退縮速度や合併症率に有意差は無かった。ELを中止した症例は年齢が優位に高かった。【結論】ELはTScの心疾患合併例に安全に使用可能だった。