[OR13-5] 先天性孤立性左心室瘤:経時的に形態と機能が大きく変化した一例
Keywords:心室瘤, 心室憩室, 先天性
【背景】先天性左心室瘤/憩室は疾患頻度0.04%程度とされる稀な心奇形でおよそ70%の症例は他の心血管奇形や奇形症候群に合併している。瘤と憩室は主に心内腔形態や心室壁の構成成分で区分され、心室瘤では心室との交通孔が広く、瘤部位は心筋線維が少なく収縮不良を伴うことが多い。一方、心室憩室では心室との交通部位が括れて狭く、憩室部位の心筋構造は正常で収縮が良い。今回我々は出生当初、心筋菲薄化と収縮低下を認めたが、経時的に壁厚や壁運動が大幅に改善した非典型的な孤立性先天性左心室瘤の症例を経験したので報告する。【症例】3歳男児、胎児不整脈を指摘され当院産科に紹介された。在胎39週、2570gで出生し、不整脈に関しては心室期外収縮の散発であったが、心エコーによるスクリーニング検査で左室心尖部を占める左室基部方向と広い交通を持つ心室瘤を認めた。同部位の心筋は広範に菲薄化し収縮能も低下していたためアスピリン内服を開始した。その他の合併奇形は認めなかった。生後一か月の心筋シンチでは集積低下が顕著であったが、造影CTで冠動脈起始・走行異常は明らかでなかった。その後は末梢血管拡張薬のみ追加し外来経過観察してきたが、近年瘤形態そのものは大きく変化無い一方、同部位の心筋厚は増大し壁運動もほぼ正常化した。心筋シンチでの集積も改善している。心不全や血栓塞栓症の発症は無く、心拡大やBNP上昇も認めない。【考察】本症例では出生後に比べ経過観察中明らかに心筋性状/機能が改善した。左心室瘤/憩室の病態形成は初期発生段階の心筋形成の異常と考えられているがetiologyは確立していない。ウイルス感染が心室瘤の一因という報告もあり、本症例も出生時に心筋炎の診断には至らなかったが瘤部位の心筋収縮機能低下が一過性であったことや一過性心室性不整脈を認めたことはウイルス感染を含めた心筋障害をきたす病態が発症に関与した可能性を示唆する。