[OR14-1] 酸素飽和度変化に基づいた半定量的肝静脈血流評価の可能性
キーワード:肝臓, 先天性心疾患, 血流
背景:心不全に伴う肝うっ血は肝細胞障害と間質の炎症を引き起こす。高度肝障害では、肝血流量を維持しながら供給は門脈優位から肝動脈優位へと変化し、肝静脈酸素飽和度が上昇することを過去に報告した。フォンタン循環では還流できなかった門脈血は体循環短絡を形成し、下大静脈へ還流する症例があることが知られ、肝静脈を経由する血流量は最終的に減少する可能性がある。肝静脈血流量は肝障害に伴って減少するという仮説を検証した。方法:小児先天性心疾患32例を対象に心臓カテーテル検査中に肝静脈流入前後の下大静脈血、肝静脈、体静脈系各所の酸素飽和度を測定した。O2 step upに基づいて肝静脈血流量の理論値を算出し、各種肝障害指標との関連を解析した。結果:肝静脈酸素飽和度が高く、理論値が算出できない9例を除いて解析した。肝静脈血流量QHVは心拍出係数CIと独立した値を示した。QHVは肝タンパク合成能指標であるアルブミン/IgG比と正相関(Alb/IgG = 4.00 + 0.29*Q HV, p=0.0010)を認めた。また、フォンタン症例では血清ヒアルロン酸(p=0.059)、III型プロコラーゲン(p=0.084)、IV型コラーゲン(p=0.069)、アルドステロン (p=0.066)とも弱い負の相関を認め、肝静脈血流量は肝繊維化によって減少する可能性が示唆された。結論:先天性心疾患、特にフォンタン術後の肝循環不全はフォンタン不全と関わる可能性があるが、肝障害に起因する肝血行動態の変化に伴い、門脈血だけでなく肝動脈血も肝静脈経由で還流できなくなる複雑な循環に変貌すると考えられる。Fickの法則を利用した半定量的肝静脈血流量はフォンタン術後において線維化マーカーおよび肝腎連関を示唆するアルドステロンと関連を示し、肝障害のサロゲートマーカーとして有用な可能性がある。一方、肝障害に伴う肝静脈血酸素飽和度の偽正常化によって評価が不適切となる症例も多いことが課題であり、早期の病態検出に有効と考えられる。