[OR17-3] 二心室修復後遠隔期に静脈圧上昇と肝硬変を呈した心室中隔欠損を伴わない肺動脈弁閉鎖(PA/IVS)の1例
キーワード:PA/IVS, one and one half repair, 成人先天性心疾患
【背景】心室中隔欠損を伴わない肺動脈弁閉鎖(以下PA/IVS)に対する治療戦略として、右室拡張末期容積(以下RVEDV)および三尖弁輪径(以下TVD)に応じて、Fontan型手術、1 and 1/2 ventricular repair (以下1.5VR)、biventricular repair (以下2VR)が選択されるが、選択基準の境界は定まっていない。今回我々は2VRを施行し、遠隔期に右房圧上昇と肝硬変を呈した30歳代女性に対して1.5VRを施行した1例を経験したので報告する。【症例】30歳代女性。類洞交通を有するPA/IVSと診断。乳児期に左右BTシャント術を施行され、5歳時のカテーテル検査では、RVEDV 69%N、TVD 47%Nであった。7歳時に右室流出路形成、ASD部分閉鎖、類洞交通結紮、右室内肉柱切除を施行。経過良好で、以後、外来通院となっていた。33歳時に無症候性の心房粗動を認め、アブレーションを施行。術前造影CTにて肝実質がreticular enhancementを呈し、軽度肝硬変と診断した。洞調律復帰後の右房圧は14mmHg、RVEDVI 41.6ml/m2、TVD 36.4%N、肺動脈弁機能はないものの拡張期に渡って順行性血流を認めた。心房負荷による不整脈再発および肝硬変の進行が懸念された為、両方向性グレン吻合、肺動脈弁置換術を施行した。術後カテーテル抜去前の右房圧は8mmHg、平均肺動脈圧11mmHgといずれも術前より低下していた。現在術後3か月の時点で頭部のうっ滞症状は認めず、経過良好である。【考察】PA/IVSの予後は、修復の種類とは無関係との報告があるが、成人期以降の遠隔期予後は不明である。一方、2VR 後のPA/IVSでは、右室の拡張能低下と充填障害による経年的な運動能力低下が報告されている。本症例は、小児期には2VR境界と考えられた右室が経年的に維持困難に至ったと考えられた。【結論】2VRを行った右室容積が境界例のPA/IVSにおいて、遠隔期に心房圧上昇、肝硬変を認めた成人例を経験した。成人期での1.5VRへの変更により、短期的には右房圧の低下が得られた。