[OR19-1] 敗血症による高度左室機能障害に対し、経皮的心房中隔裂開術と両側肺動脈絞扼術で救命し得た新生児例
Keywords:経皮的心房中隔裂開術, 両側肺動脈絞扼術, 補助循環
【背景】心筋炎などによる新生児期の左室機能障害は予後不良であり、補助循環の使用を要することがある。一方で新生児、特に早産児や低出生体重児への補助循環の使用は、合併症の観点から積極的には行いづらい側面がある。今回我々は、出生直後からの敗血症に伴う高度左室機能障害およびショックで発症し、経皮的心房中隔裂開術(BAS)による肺うっ血の解除と、両側肺動脈絞扼術(BPAB)による体循環血液量の維持で、補助循環を使用せず救命し得た新生児例を経験した。
【症例】在胎34週2日、出生体重2492gの早産低出生体重児。院外で陣痛発来し、前医へ搬送中の救急車内で出生した。生直後からチアノーゼと大量喀血を認め、当院へ転院となった。当院入院時心エコー検査では構造異常を認めず、LVFS 10.6%と高度左室機能障害を認めた。血液培養からStreptococcus gallolyticusが検出され、同菌の敗血症が原因と考えられた。大動脈弓血流が逆行性であったことから動脈管依存性体循環と考え、左房拡大と卵円孔の加速血流から、重度肺うっ血による大量喀血と評価した。全身状態や体格から開胸術による補助循環の装着に不耐と判断し、緊急BASによる左房減圧を行い、喀血は著明に改善した。日齢1に体循環血液量の維持目的にBPABを施行し、その後左室機能の改善を認めたため、日齢6に肺動脈絞扼解除術と動脈管結紮術を行った。術後経過は良好で通常の2心室循環が成立することを確認し、日齢37に自宅退院となった。
【考察】BASおよび BPABは左心低形成症候群に代表される左心狭窄・閉塞性疾患において一般的な治療戦略であるが、高度左室機能障害といういわば「機能的」左心狭窄に対し行われた報告は少ない。合併症の多い早産児や低出生体重児への補助循環を回避できるという点で、有用な治療の選択肢であると考えられた。
【症例】在胎34週2日、出生体重2492gの早産低出生体重児。院外で陣痛発来し、前医へ搬送中の救急車内で出生した。生直後からチアノーゼと大量喀血を認め、当院へ転院となった。当院入院時心エコー検査では構造異常を認めず、LVFS 10.6%と高度左室機能障害を認めた。血液培養からStreptococcus gallolyticusが検出され、同菌の敗血症が原因と考えられた。大動脈弓血流が逆行性であったことから動脈管依存性体循環と考え、左房拡大と卵円孔の加速血流から、重度肺うっ血による大量喀血と評価した。全身状態や体格から開胸術による補助循環の装着に不耐と判断し、緊急BASによる左房減圧を行い、喀血は著明に改善した。日齢1に体循環血液量の維持目的にBPABを施行し、その後左室機能の改善を認めたため、日齢6に肺動脈絞扼解除術と動脈管結紮術を行った。術後経過は良好で通常の2心室循環が成立することを確認し、日齢37に自宅退院となった。
【考察】BASおよび BPABは左心低形成症候群に代表される左心狭窄・閉塞性疾患において一般的な治療戦略であるが、高度左室機能障害といういわば「機能的」左心狭窄に対し行われた報告は少ない。合併症の多い早産児や低出生体重児への補助循環を回避できるという点で、有用な治療の選択肢であると考えられた。