[OR19-3] バセドウ病母体から出生した児の循環動態の推移
Keywords:バセドウ病, 新生児, NT-proBNP
【目的】新生児甲状腺機能亢進症に伴う心不全はバセドウ病母体児において最も注意すべき合併症の一つであり循環動態には注意を払う必要があるものの、これまでに同児の循環動態を評価した報告はない。今回下記の方法でバセドウ病母体児の循環動態を前方視的に検討した。【方法】対象は2006年4月から2018年5月までに浜松医科大学付属病院で出生したバセドウ病母体児80例。Third trimesterにおける母体甲状腺レセプター抗体(TRAb)陽性36例(positive TRAb群)と陰性44例(negative TRAb群)に分類し日齢0、5、10、30における甲状腺機能ならびにN-terminal pro-brain natriuretic peptide(NT-proBNP)を含む各種パラメータを比較検討した。【結果】2群間で母体年齢、在胎週数、出生体重、Apgar score、臍帯血pHに有意差は認めなかった。抗甲状腺薬を投与されていた母体はpositive TRAb群16例、negative TRAb群10例(p=0.039)で、出生後抗甲状腺薬投与を必要とした児はpositive TRAb群の4例(11.1%)、subclinical hyperthyroidismと診断した児はpositive TRAb群の8例(22.2%)であった。positive TRAb群ではnegative TRAb群に比べ日齢5でFT4が有意に高値(p<0.05)、日齢10でFT3とFT4が有意に高値(それぞれp<0.05, p<0.01)、TSHが有意に低値(p<0.05)であった。さらに日齢5と10におけるNT-proBNPはpositive TRAb群でnegative TRAb群に比べ有意に高値であった(日齢5:それぞれ中央値752pg/mL, 563pg/mL, p=0.034; 日齢10:それぞれ中央値789pg/mL,597pg/mL, p=0.002)。【結論】本研究ではsubclinicalな甲状腺機能亢進症の児が多かったものの、positive TRAb群では日齢5から10にかけて有意なNT-proBNPの上昇が確認された。母体TRAbが高値の場合、特に日齢10までの期間は児の循環動態や心不全症状に注意する必要があることが示唆された。