[OR19-5] 先天性心疾患の新生児搬送: 産科機能を持たない小児専門施設との相互補完的連携
キーワード:新生児, 搬送, 胎児診断
【はじめに】先天性心疾患の周産期管理は, 胎児診断・分娩から新生児管理・手術へとシームレスな体制整備が理想とされている。しかし医療事情より, そのような体制が同一施設で完結できない地域も存在する。当院は県内の先天性心疾患の胎児診断・周産期管理の中核病院であり, 胎児診断を基に分娩計画を立て, 出生後先天性心疾患手術が可能な施設へと搬送する役割を担っている。【方法】2017年1月から2019年12月の3年間に当院で出生し, 新生児搬送を行なった先天性心疾患の新生児を対象とし, 診療録から後方視的に検討した。【結果】3年間に50例の先天性心疾患の新生児搬送を行なった。在胎週数と出生体重の中央値は, 38週, 2663gで, 自然分娩12例, 計画的誘発分娩31例, 予定帝王切開4例, 緊急帝王切開3例であった。出生後48例が直近の先天性心疾患手術が可能な小児専門施設へ搬送され, 2例が他の小児心臓血管手術が可能な施設へ搬送された。出生から搬送までの時間の中央値は4時間(四分位範囲: 3-23時間)であった。6例が気管挿管下に, 37例がプロスタグランジンE1製剤投与下に搬送された。新生児期手術は47例に行なわれた。また以下の胎児診断がついた3例, 心房間交通に強い制限のある左心低形成症候群, 重症Ebstein奇形, 心不全徴候のある大動脈左室トンネルの3例では, 小児専門施設の循環器科・新生児科スタッフが当院での帝王切開に立ち会い, 気管挿管及び臍帯静脈カテーテル留置を行なった後, 手術室から搬送した。この3例を含め, 全50例に搬送に伴う有害事象は認められなかった。【結語】正確な胎児診断と周産期管理計画により, 先天性心疾患児の安全な新生児搬送が可能であった。同一施設内において胎児診断から分娩, 手術を含めた新生児管理まで完結できる体制整備を進める必要性については論を待たないが, 緊密な施設間連携により各施設の機能を補完できる可能性がある。