The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(I)20(OR20)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患1

指定討論者:三谷 義英(三重大学大学院医学系 研究科小児科学)
指定討論者:馬場 志郎(京都大学大学院医学研究科 発生発達医学講座 発達小児科学)

[OR20-2] シリビニンは肺動脈性肺高血圧症ラットモデルにおいて症状緩和効果がある

川口 奈奈子, 張 ていてい, 羽山 恵美子, 古谷 喜幸, 中西 敏雄, 杉山 央 (東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)

Keywords:pulmonary arterial hypertension, CXCR4, silibiinin

【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)は指定難病で、有効な治療法が確立されていない。治療薬開発に用いるため、我々はモノクロタリン投与と低酸素飼育によるPAHモデルラットを作製した。そして、細胞増殖や幹細胞の定着、がん転移に関わるケモカイン受容体CXCR4の発現が、このモデルラットの肺動脈において正常対照群より上昇することを2018年に報告した。【目的】そこで、CXCR4阻害剤がPAHの症状を緩和するのではないかと考え、CXCR4阻害剤作用を有するシリビニンの効果を調べた。シリビニンは毒性のない天然のポリフェノール性フラボノイドで、肝疾患、がん、エイズ(CXCR4はHIVのco-recepter)の治療薬としても期待されている。【方法】オスのSDラットにモノクロタリンを単回投与して1-5週間低酸素環境(1 0%O2)で飼育してPAHモデルを作製し、その間シリビニンあるいはビヒクル(シリビニンを経口投与するために混合した増粘剤)をシリビニン群と同量毎日経口投与した。実験終了時各週に、右心室圧(RVSP)、フルトンインデックス(FI)などを測定して、PAHの重症度を評価した。また、肺動脈ならびに肺も採取し、RT-qPCRや組織免疫染色法を用いてCXCR4やいくつかの幹細胞マーカー、炎症マーカーの発現を調べた。【結果】シリビニン投与2週間で、対照群と比較して有意にRVSP、FIなどの上昇が抑制された。同時に、肺動脈におけるCXCR4の発現の上昇も抑制された。しかしながら、3週間以降では、効果が観察されなかった。【考察】シリビニンは肺動脈のCXCR4の発現を抑制することによってPAHの症状を緩和したと考えられるが、3週間経過後以降は、効果がなかった。このことから、シリビニンがPAHの進行において比較的初期に効果がある、すなわち、比較的初期にCXCR4がPAH進行に関係すると考えられる。【結論】シリビニンはPAHの進行において比較的初期に治療薬として有効である可能性がある。