[OR20-4] Ebstein 奇形に先天性間質性肺疾患を合併した一男児例
キーワード:Ebstein奇形, 先天性間質性肺障害, 先天性肺胞蛋白症
Ebstein奇形の新生児期治療方針決定では、肺血流が確保されるか否か重要となる。今回我々は、右心室サイズ含めた肺血流の評価から肺循環が維持できると判断したにもかかわらず進行性の呼吸不全症を生じ、肺生検含めた精査の結果から先天性間質性肺疾患と診断された治療難渋症例を経験したのでここに報告する。 症例は3か月男児。在胎中の異常は指摘されなかった。在胎40週4日、予定日超過のために誘発分娩で出生、出生時体重3400g、Apgar Score 8/8点だった。出生後徐々に進行する呼吸障害から酸素投与、CPAP管理を行うも改善せず、精査の結果 Ebstein奇形と診断された。Lipo-PGE1持続点滴開始後に当院搬送となった。三尖弁plasteringは55.4mm/m2、三尖弁逆流中等度以上であったが、右心房・右房化右室サイズから計算したGOS scoreは0.64(Grade 2)と低く肺血流は右心室からの順行性血流のみで成り立つと考えられた。その後も進行性の呼吸不全が持続したため、生後3ヶ月で根治術(Cone術)を施行した。しかし術後も呼吸不全と低酸素血症が進行したため挿管管理となった。原因検索のために肺生検を行なった。肺表面は敷石状で、肺胞内に泡沫状マクロファージの集簇、間質の線維化と肥厚を認め、採血ではSP-D低下も認めた。先天性間質性肺疾患と診断し、ステロイド投与、サーファクタント気管内投与を行なった。呼吸不全は徐々に改善し抜管可能であった。現在、先天性間質性肺疾患と先天性肺胞蛋白症の鑑別のための遺伝子検査を行なっている。 肺血流減少型右心系先天性心疾患は、時に肺低形成や末梢肺動脈のびまん性狭窄を合併するが、先天性間質性肺疾患との合併は極めて稀である。説明困難な経過を呈した呼吸不全症例に対して積極的な肺生検を行うことに意義があると思われた。