The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(I)21(OR21)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患2

指定討論者:高月 晋一(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
指定討論者:土井 庄三郎(国立病院機構 災害医療センター)

[OR21-1] ヒト内在性レトロウイルスKは肺動脈内皮細胞において炎症と内皮間葉転換を誘導する

大槻 祥一郎1,2, Taylor Shalina2, Moonen Jan-Renier2, Marciano David2, Cao Aiqin2, Wang Lingli2, Roof Michal2, 澤田 博文1, 三谷 義英1, Rabinovitch Marlene2 (1.三重大学 大学院 医学系研究科 小児科学, 2.Depatrment of Pediatrics, Division of Cardiology, Stanford University School of Medicine)

Keywords:肺動脈性肺高血圧, ヒト内在性レトロウイルス, 内皮間葉転換

【背景】ヒト内在性レトロウイルス(HERVs)配列はヒトゲノムの8%を構成するが、大部分は変異により不活化されている。しかしHERV-K dUTPaseは、癌や自己免疫疾患、肺動脈性肺高血圧の病態に関連している。【目的】HERV-Kの肺動脈内皮細胞(PAECs)への病態を解明すること。【仮説】単球より分泌されたHERV-K dUTPaseが、PAECsに炎症及び内皮間葉転換(EndMT)を誘導する。【方法】ヒトPAECsにrecombinant HERV-K dUTPaseを投与し、細胞表現型、遺伝子及びタンパク質発現の変化を評価した。HERV-K dUTPaseを過剰発現させた単球(THP1細胞)とPAECsを共培養し、細胞表現型、遺伝子発現の変化を評価した。分子メカニズムに関して、候補受容体(Toll-like receptor 4(TLR4))及び下流シグナル分子(NFκB、activator protein 1(AP1))を、small interfering RNA又は阻害剤で抑制し、vascular cell adhesion molecule 1(VCAM1)、IL6(共に炎症の指標)及びSnail(EndMTの指標)に対する作用を評価した。【結果】HERV-K dUTPaseを投与されたPAECsは、平滑筋様の形態変化を示し、免疫染色でαSMアクチンの増加、血管内皮(VE)カドヘリンの減少を認めた。また遺伝子/タンパク質レベルで、Snailの増加、VEカドヘリン及びCD31の減少、αSMアクチン及びSM22αの増加を認めた。共培養に於いてもHERV-K dUTPaseを投与された場合と同様の結果が得られた。またVCAM1及びIL6が増加した。次にTLR4の阻害は、HERV-K dUTPaseによるNFκB及びAP1(cJun)の活性を抑制し、さらにNFκBの阻害はVCAM1、IL6及びSnailを抑制した。一方AP1(cJun)の阻害は、IL6、Snailを抑制したが、VCAM1を促進した。VCAM1の制御には、共免疫沈降とmass spectrometryの結果よりCD146-ERK-AP1(ATF2)シグナルも関与していた。【結論】単球より分泌されたHERV-K dUTPaseは、PAECsに於いてTLR4及びCD146を介してNFκB、AP1(cJun、ATF2)を活性化し、炎症及びEndMTを誘導した。