[OR21-5] 先天性横隔膜ヘルニアに伴う肺高血圧、肺循環の遠隔期成績:肺血管拡張薬の有益性
キーワード:先天性横隔膜ヘルニア, 肺動脈性肺高血圧, 心臓カテーテル検査
【背景と目的】重症先天性横隔膜ヘルニア(CDH)に伴うPH(CDH-PH)は急性期だけでなく遠隔期にも重要な予後因子となる。実臨床ではCDH-PHに対し、吸入NO(iNO)に加え、PDE5阻害薬などの肺血管拡張薬が使用される例があるが、適応、評価法、効果など、その意義は確立していない。CDH遠隔期の肺高血圧、肺循環成績や肺血管拡張薬の有益性を検討する為に、当院のCDH症例をまとめた。【方法】2001~2019年に当院でCDH管理を行った症例の後方視的検討。CDH-PH治療例を中心に急性期治療内容、肺シンチや心臓カテーテル検査(心カテ)を含めた検査所見、臨床経過について検討した。【結果】対象48例中12例で急性期にiNOに加えて肺血管拡張薬が使用され、うち生存例は6例だった。退院時評価では、6例ともエコーでPHを認め、肺シンチを行った3例は全て高度の血流左右差を認め、6例全例で肺血管拡張薬が継続された。退院後の経過中、死亡はなく、他院で肺血管拡張薬が中止された1例を除いてPH増悪に伴う再入院はなかった。術後肺血管拡張薬投与6例中5例と非投与1例で心カテを施行した。心カテ前のエコーは、1例で軽度のPHを認めるのみだった。安静時平均肺動脈圧(mPAP) は17.3±2.0mmHg、肺血管抵抗係数は2.2±0.7wu*m2だったが、健側肺動脈閉鎖下ではmPAP 27.5±2.5mmHgへ上昇し体血圧低下も認めた。肺血管拡張薬非投与の1例ではこれらの変化が顕著で、肺血管抵抗が高く、患側の肺血管床が乏しかった。肺血管拡張薬投与例では、肺シンチで継時的に肺血流アンバランスが改善した。【結語】CDH-PH遠隔期には、顕著な臨床症状やエコーでのPH所見がない例でも、左右の肺血管の不均衡に伴う肺循環障害が持続し、肺血管拡張薬の有効性を示唆する例も認めた。PH増悪を来すこともあり、肺シンチや心カテを含めた総合的な肺循環評価が重要と考えた。リスク階層化に基く管理や、肺血管拡張薬の有益性の確立のため、さらなる検討が必要と考えた。