[OR22-1] フォンタン術後の心血管機能特性~容量負荷に対する反応性~
Keywords:フォンタン, 心機能, 心不全
背景:前負荷低下と後負荷増強はフォンタン循環に特徴的であり、末梢臓器障害と関連する。ところが遠隔期には前負荷の過剰動員を介してフォンタン不全に至る症例が存在し、前負荷予備能の変化が疑われる。造影剤改良に伴い、心抑制作用がほとんどない造影が可能なことに着目し、フォンタン循環では容量負荷に対する反応性が経時的に変化するという仮説を検証した。方法:心臓カテーテル検査に際し主心室造影前後の中心静脈圧上昇(ΔCVP)と心室収縮期および拡張末期圧の変化 (ΔESP, ΔEDP)を同時圧測定により解析した。結果:主心室造影剤量 (1.3±1.1 vs 1.2±0.4 ml/kg, p=0.72)およびΔCVP (1.0±1.5 vs 1.0±0.8 mmHg, p=0.81)はフォンタン(N=26)・非フォンタン (N=95)で同様であったが、フォンタン症例ではEDP上昇(0.6±1.4 vs 1.4±1.6 mmHg, p= 0.014)が小さく、血管拡張に伴うESP低下が顕著であった (-3.5±5.8 vs -1.5±4.1 mmHg, p= 0.040)。非フォンタンでは年齢を問わずCVP、EDP、ESPの変化は一定であったが、フォンタンでは年齢とともにCVP (ΔCVP=0.09*Age-0.36, p=0.024)およびEDP (ΔEDP=0.09*Age-0.41, p=0.043)上昇が強まった一方、ΔESPは一定 (p=0.70)であった。フォンタン症例における経肺圧較差は造影前後とも年齢とともに低下し (TPG=6.59 - 0.25*Age, p=0.011)、またΔCVPはPIIIPと弱い正相関(p=0.068)を示し、肺血管抵抗低下と心血管系リモデリングが示唆された。EDP上昇に対するESP上昇反応は乏しく、Frank-Starling機序の破綻が疑われた。ΔCVPは既報同様にγGTPと弱い正相関を認めただけでなく、eGFRと負相関を認めた (eGFR = 120.5-8.7×ΔCVP, p=0.016)。結論:フォンタン術後症例の前負荷予備能は年齢とともに代償されるが、遠隔期には前負荷予備能改善のメリットを享受できない心臓機能障害の存在が示唆された。末梢臓器障害の進行が前負荷予備能の変化に寄与する可能性がある。