The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラル(I)23(OR23)
川崎病・冠動脈・血管1

指定討論者:鮎澤 衛(日本大学医学部附属板橋病院 小児科)
指定討論者:深澤 隆治 (日本医科大学付属病院 小児科)

[OR23-4] 川崎病の冠動脈瘤における瘤内血栓の形態と性状

横内 幸, 大原関 利章, 佐藤 若菜, 浅川 奈々絵, 高橋 啓 (東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科)

Keywords:川崎病, 冠動脈瘤, 血栓

【背景】川崎病の合併症である冠動脈瘤では、瘤内に血栓が形成されやすく、虚血性心疾患を引き起こす。一般的に、血栓は血小板血栓とフィブリン血栓とに分けられるが、川崎病冠動脈瘤における瘤内血栓の性状についての病理組織学的な検討はまだみられない。【目的】発症から2年までの冠動脈瘤内に生じる血栓の性状を明らかにすること。【方法】発症後2年までに突然死した川崎病剖検例のうち、瘤内に血栓が形成されていた冠動脈瘤15例、21枝(急性期10例14枝、遠隔期5例7枝)を観察した。これらの冠動脈瘤中心部に対して、HE、EvG、PTAH、CD42b、CD31、CD34、第VIII因子の染色を行い、瘤内血栓の形態と性状を検討した。【結果】瘤内血栓の形態は、瘤の内腔を完全に閉塞する内腔閉塞型と内膜表面を覆うような壁着型が存在した。内腔閉塞型では、急性期には血小板が優位で多数の赤血球が混在していたのに対し、遠隔期にはフィブリンが優位であった。一方、壁着型は多くの症例でフィブリン優位であった。血小板は血栓内部に網目状あるいは層状に認められ、血栓の辺縁にも存在していたが、遠隔期には血栓辺縁に血小板はほとんどみられなかった。遠隔期例では、血栓の付着部に内皮化や肉芽組織の形成からなる器質化がみられ、肥厚内膜にフィブリンがとりこまれる像もみられた。遠隔期の内腔閉塞型のうち、発症後1年8ヶ月の症例では、壁着型の器質化したフィブリン血栓が基盤にあり、内腔に血小板血栓が形成され閉塞する像が認められた。【結論】川崎病冠動脈瘤内の血栓は、内腔閉塞型と壁着型の2つの形態があり、その性状は血栓形成から死亡までの時間により異なると考えられた。