The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

その他

デジタルオーラル(I)25(OR25)
その他

指定討論者:稲村 昇(近畿大学医学部 小児科)
指定討論者:上野 倫彦(手稲渓仁会病院 小児科)

[OR25-4] リウマチ性弁膜症6例の臨床経過と予後

石踊 巧1, 村上 卓2, 矢野 悠介3, 嶋 侑里子1, 野崎 良寛2, 林 立申3, 高橋 実穂4, 塩野 淳子3, 堀米 仁志2 (1.筑波大学附属病院 小児科, 2.筑波大学医学医療系 小児科, 3.茨城県立こども病院 小児循環器科, 4.筑波メディカルセンター病院 小児科)

Keywords:リウマチ熱, 弁膜症, 関節炎

背景:リウマチ熱は、本邦においては新規発症報告が年5例程度で、近年診療する機会は稀であるが、重症例では弁置換術が必要となる疾患である。2015年にAHAからRevision of Jones Criteria 2015年が提示されている。目的:筑波大学附属病院および茨城県立こども病院で経験したリウマチ性弁膜症の臨床象を検討し、臨床像の特徴、心炎の予後について明らかにする。方法:1994年から2018年に当地域で診断されたリウマチ性弁膜炎の6例について初診時症状、診療科、診断契機、経過、治療、弁膜症の予後について診療録から後方視的に検討した。結果:診断時年齢は3-16歳(中央値8.5歳)で男女比は1:1であった。発症から診断までに3日-4年10か月(中央値11.5日)かかっていた。熱が初期症状となり、心炎の合併で診断される症例が5例と多かった。心炎、関節炎以外の大項目は1例も発症しなかった。PQ時間の延長は1例でのみ認められた。全例経過中発熱とCRPや血沈の上昇を認められた。関節炎として小児科以外の診療科を受診した例は、診断が遅れる傾向があった。関節炎は全例鎮痛薬に反応し、移動性の多発関節炎で後遺症を残さなかった。弁膜症は大動脈弁と僧帽弁に発症し、大動脈弁逆流を5例に認め、僧帽弁逆流を3例に認めた。予後:経過観察期間は1-25年(中央値8.5年)で経過中リウマチ熱の再発は認めなかった。僧帽弁逆流は初診時重度でも長期的には改善することが多かった。大動脈弁逆流は長期に残存し、診断が遅れた2例は弁置換が必要になった。結論:リウマチ性弁膜炎は初期には関節炎が前景に立ち、心炎の診断が遅れる傾向がある。移動性多関節炎はリウマチ熱に特徴的であり、診断の糸口として有用である。大動脈弁逆流は予後に影響することが多い。僧帽弁逆流は長期経過で軽快が期待できる。溶連菌感染に関連した多発関節炎の診療に際しては、継続的な心炎のスクリーニングが必須である。