The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

その他

デジタルオーラル(I)25(OR25)
その他

指定討論者:稲村 昇(近畿大学医学部 小児科)
指定討論者:上野 倫彦(手稲渓仁会病院 小児科)

[OR25-5] 重症心奇形術後患児における胃食道逆流症の検討

井上 真帆1, 文野 誠久1, 古川 泰三1, 前田 吉宣2, 山岸 正明2, 田尻 達郎1 (1.京都府立医科大学 小児外科, 2.京都府立医科大学 小児心臓血管外科)

Keywords:胃食道逆流症, 横隔神経麻痺, 術後合併症

【目的】先天性心疾患に対する心血管手術後に胃食道逆流症(GER)を発症する症例がしばしば経験されるが、これらの病態の詳細についてはまだ解明されていない。今回、重症心奇形術後患児に発症したGER(GER-ACS)について、リスク因子に着目し検討した。
【方法】当院で2008年から2017年の10年間に開心術を施行された1410人の先天性心疾患症例において,GER-ACSの発症率および臨床経過について後方視的に解析を行った。
【結果】1410人中19人(1.3%)において術後新規にGER症状が出現し,GER-ACSと診断した。診断時期は中央値11.0ヶ月(3-112ヶ月)であった。術中横隔神経損傷に対する横隔膜縫縮術は、GER未発症患者よりもGER-ACS患者において優位に高頻度であった(1.7 % vs. 57.9 %、p<0.01)。GER-ACS19例において、2回以上の開心術を受けた割合は89.5%,術後発症の中枢神経障害は26.3 %、食道裂孔ヘルニア42.1 %であった。GERによる誤嚥などの重篤な症状を呈した症例は19例中9例であり、うち耐術能を有する6例では噴門形成術を先行した。症状が嘔吐のみの10例においては保存療法を先行し、うち1年以内に改善に至らなかった2例に噴門形成術を施行した。最終的に8例(42.1%)において噴門形成術が行われ、術後は全例で経口または胃瘻からの経腸栄養が可能となった。
【結論】横隔膜縫縮、複数回手術、中枢神経障害は、GER-ACS発症のリスク因子となりうる。先天性心疾患の治療成績向上に伴い重症児が生存するようになり、今後ますますGER-ACSの頻度は増加することが予測される。これらの治療においては、小児心臓血管外科および小児循環器科との密な連携のもと、小児外科医の積極的な関与が成績改善に重要と考えられた。