[OR28-5] 術前3DCG viewerによる構造把握が有用であった心外型巨大嚢状Valsalva洞動脈瘤の乳児例
キーワード:Valsalva洞動脈瘤, 3DCG viewer, 動脈瘤入口部閉鎖
【背景】先天性Valsalva洞動脈瘤の発生頻度は低く,特に1歳未満での手術報告例は少ない.【症例】胎児期に巨大嚢状Valsalva洞動脈瘤と診断された6カ月の女児.在胎38週2日,予定帝王切開で出生し各種検査で右冠動脈洞と無冠動脈洞に発生した2つの巨大な心外型嚢状Valsalva洞動脈瘤と確定診断された.右冠動脈洞動脈瘤(動脈瘤1)はdaughter lesionを伴う最大径33mmの嚢状瘤で右房右室を圧排し,無冠動脈洞動脈瘤(動脈瘤2)は22mm大で上大静脈を圧排していた.大動脈弁閉鎖不全や虚血性変化は認めなかったが,右冠動脈は動脈瘤1の瘤入口部頭側から起始し瘤壁を下行していたため手術の際に注意を要すると考えられた.そこで術前に,小児先天性心疾患リアルタイム3DCG viewer(3DCG viewer)を作成し,動脈瘤1の入口部とその直上から起始する右冠動脈口との位置関係を大動脈内からの視点で確認した.更に2つの動脈瘤入口部の位置と大きさ,大動脈弁輪との関係も把握した.これらの情報を基に6カ月時体重7.6kgで手術を施行した.2つの動脈瘤入口部を大動脈側からグルタルアルデヒド処理した自己心膜で閉鎖したが,この際に右冠動脈口に縫合線が近付き過ぎないよう細心の注意を払った.その後2つの動脈瘤壁に小切開を置きフィブリン糊を瘤内から縫合線に塗布,大動脈遮断解除後major bleedingの無いことを確認し同部を縫合閉鎖した.術後は僅かな大動脈弁逆流を認めたが,動脈瘤1内は血栓で満たされており右冠動脈は良好に開存していた.瘤壁の病理組織学的検査では,内皮細胞は広汎に剥脱し,中膜は高度のmyxomatous 変化を伴って肥厚していた.【結語】胎児期に診断された多発性の心外型巨大嚢状Valsalva洞動脈瘤に対し,乳児期に瘤入口部閉鎖術を施行した.術前に作成した3DCG viewerは,瘤入口部と冠動脈口や大動脈弁輪との位置関係を手術時の視点で把握でき有用であった.