The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(I)29(OR29)
外科治療4

指定討論者:橘 剛(神奈川県立こども医療センター循環器内科・心臓血管外科)
指定討論者:小谷 恭弘(岡山大学 心臓血管外科)

[OR29-1] 機能的単心室に対する体肺動脈短絡術 -Low flow strategyが遠隔期に与える影響-

山内 早苗1, 盤井 成光1, 石丸 和彦1, 三輪 晃士1, 康 利章1, 萱谷 太2, 高橋 邦彦2, 青木 寿明2, 石井 陽一郎2, 川田 博昭1 (1.大阪母子医療センター 心臓血管外科, 2.大阪母子医療センター 小児循環器科)

Keywords:単心室, 体肺動脈短絡術, フォンタン手術

【背景】機能的単心室(f-SV)症例では, 心機能を保つべく, 近年では細い体肺動脈短絡術(SPS)を行い, 早期に両方向性グレン(BDG)を行うlow flow strategyが主流であるが, 肺動脈の発育不良やこれによるFontan術後遠隔期への影響が懸念される.【目的】f-SVに対するSPSが心機能と肺動脈発育, Fontan後の遠隔期成績に与える影響を検討すること.【対象と方法】対象は1991年以降に当院でSPSを行い, Fontan手術に到達したf-SV 111例のうち, Fontan後1年以上が経過した102例.肺動脈閉鎖 63, 肺動脈狭窄 39例で, 初回SPSの日齢は中央値46日(0-1236日). うち25例にSPS追加を行った. BDG年齢は1.0歳(95日-4.8歳), Fontan年齢は3.6歳(1.7-24.0歳)であった. 全例, Fontan後1年で心カテ評価を行い, 54例で遠隔期カテ(Fontan後10年)を行った. これらを2005年以前にSPSを行った前期群51例とlow flow strategyを積極的に取り入れた2006年以降の後期群51例にわけて比較検討した. なお, SPS追加例は全例前期群であった.【結果】Fontan術後の観察期間は中央値8.6年(最長24年). SPSの日齢, 体重, 人工血管径は前期群 48日, 3.9 kg, 4.0 mm, 後期群 45日, 3.8 kg, 4.0 mmで差はなかったが, BDGおよびFontanを行った年齢は前期群が有意に高かった(前期群: BDG 2.5歳, Fontan 3.6歳, 後期群: BDG 0.6歳, Fontan 1.7歳).Fontan前のPA indexは前期群 299, 後期群 205と前期群が有意に大きかったが, Fontan後1年および遠隔期のPA indexは両群間に差はなかった. Fontan前, Fontan後, 遠隔期いずれも肺動脈圧, EF, 房室弁逆流, BNPに両群間差はなかったが, 遠隔期の心係数のみ後期群が有意に高かった.【まとめ】機能的単心室に対する体肺動脈短絡術におけるlow flow strategyは, Fontan後の肺動脈径には影響を与えず, 遠隔期の心機能は維持されることから, 妥当であると考えられるが, 遠隔期の症例数が少なく, 今後さらなる検討が必要と考えられた.