[OR29-2] 機能的単心室症例に対する新生児期体肺動脈シャントの治療成績
Keywords:体肺動脈シャント, 単心室, 新生児
【背景】機能的単心室症例(SV)に対する体肺動脈シャント(SPS)は容量負荷による房室弁逆流の悪化や心機能低下をまねく可能性があり、出生後早期にSPSが必要となる症例では急性期の肺血流調節を含めて治療に難渋する例も少なくない。【目的】当院で施行した(SV)に対する新生児期SPS症例の治療成績を検討し、Fontan手術を目指すうえでの適正な肺血流調節の在り方を考察した。【対象】2004年1月から2020年2月までに当院で施行したSVに対する新生児期初回SPS:84例を対象とした。【結果】SPS手術時日齢は16±6.8日、体重:3.0±0.5kg、PA:53例、PS:31例、アプローチは側開胸:35例、正中:50例でOn pump:30例。同時手術は肺動脈形成:10例、TAPVR:5例、Starnes:5例、ASD creation:2例、三尖弁形成(TVP):1例であった。シャントサイズは側開胸で3.5mm:32例、4mm:3例。正中で3mm:11例、3.5mm:28例、4mm:10例であった。手術死亡は5例(5.9%)で全例が同時手術を伴うOn pump症例であった(nonconfluent PA:1、Ebstein:1、TAPVR:3)。11例(13.1%)で同一入院中に早期の再手術による肺血流量の修正を要した。この他にGlennへのinterstageに17例で再手術を施行し(SPS追加:17例、ASD creation:2例、UF+SPS:1例)、Glenn手術到達前の遠隔期(9±5.2カ月)に5例の死亡を認めた。死亡10例を除く74例中、66例(78.5%)が月齢:12±7.8カ月でGlenn手術に到達(7例待機、2例drop out)、Glenn手術後に1例が死亡した。65例(77.4%)が1.9±1.0歳でFontan手術に到達(1例待機)しており、Fontan手術前の平均肺動脈圧:13±3.4mmHg、PAI:275±130mm2/M2で肺動脈の発育は良好であった。Fontan到達後に1例の遠隔死亡を認め生存率は1年:89%、5年:84.8%であった。【結語】機能的単心室症例に対する新生児期SPSは、術後早期から肺血流量の修正を必要とする症例が少なくない。Glenn手術以前の適正な肺血流の維持によりFontan手術への到達が可能と考えられる。