[P01-2] 左心狭窄疾患に対する動脈管ステント留置の現状と適応
キーワード:動脈管ステント, 左心低形成症候群, ハイブリッド治療
【背景】動脈管依存性の左心狭窄疾患に対する動脈管ステント留置(d-stent)は両側肺動脈バンディング(bPAB)と組み合わせることで、新生児期のハイリスク手術の回避に一定の効果が得られる。【目的】当院での動脈管ステント留置の現状と今後の課題について報告する。【対象・方法】2015年1月以降に体血流を動脈管に依存する先天性心疾患に対して、動脈管ステント留置をおこなった38例について、臨床経過を診療録より後方視的に検討した。【結果】男児20例、平均出生体重2766g、在胎週数38週4日、胎児診断ありが17例であった。診断は大動脈閉鎖を伴うHLHS4例、順行性大動脈血流があるHLHC14例、大動脈縮窄/離断複合17例、大動脈離断を伴う総動脈幹症2例、重症大動脈弁狭窄兼逆流1例であった。心外合併症は染色体異常7例、食道閉鎖を含む多発奇形3例、頭蓋内出血1例がみられた。ステント留置日齢は中央値9日(2-299日)、全例でハイブリッド手術として施行し、ステントサイズは7-9mm、2本留置したのが8例であった。28例が大動脈形成を伴う手術に到達し、ステント留置からの経過期間は中央値231日(20-615日)、術式はNorwood術6例、Norwood+グレン術6例、Yasui手術9例、VSD閉鎖+大動脈修復3例、Rastelli+大動脈修復2例、大動脈修復+主肺動脈バンディング1例、Ross+大動脈修復1例であった。8例が経過中に死亡、ステント留置による重篤な合併症はなかった。期間前半では周術期管理の安定を目的にNorwood+グレン手術待機としてのステント留置も多かったが、症例の蓄積と詳細な形態観察から初回介入術式をより厳密に選択するようになりHLHS/HLHC症例は減少傾向であった。一方でYasui手術待機や、心外合併症のため新生児期ハイリスク手術を回避する症例が増加している。【まとめ】左心狭窄疾患に対する動脈管ステント留置の有用性には一定のコンセンサスがあるものの、施設の方針や症例毎の適応については慎重な検討が必要である。