[P01-3] 新生児期にインドメタシン投与により、大動脈弓形成術の適応を判断した動脈管開存症・大動脈縮窄の1例
キーワード:大動脈縮窄症, 動脈管開存症, インドメタシン
【緒言】大動脈縮窄(CoA)は、動脈管開存症(PDA)の閉鎖に伴い顕在化することがあり、胎児期及び生後早期の手術適応評価は困難な場合がある。今回、新生児期にインドメタシン投与により大動脈弓形成術の適応を判断したPDAを伴うCoAの1例を経験したため報告する。【症例】在胎38週、3610gで出生した男児。日齢0より心雑音を指摘され、日齢2に当院へ転院となった。当院入院時、SpO2と血圧の上下肢差、頻脈、多呼吸はなかった。心臓超音波検査でPDA(径4.6mm、左右方向優位の両方向性)、小さい心室中隔欠損を認めた。大動脈弓峡部(isthmus)の径は3.8mmと細めで、流速は1.1m/sであったが、PDA閉鎖に伴うCoAの顕在化の可能性が考えられた。日齢3より肺血流過多による心不全を認め、PDAによる症状と判断した。この時点でisthmusは4.9mmあったが、PDA閉鎖術のみを選択した場合、術後にisthmusが狭小化するリスクが危惧された。PDAの治療と同時にisthmusの狭小化を観察する目的で、日齢6より3日間、インドメタシンを投与した。日齢10にPDAが狭小化し肺血流増多症状は軽減したが、血圧の上下肢差が出現、isthmus径2.2mm、流速3.0m/sとCoAが増悪した。循環不全症状は認めなかったが、更なるisthmusの狭小化を防ぐため、lipo-PGE1を少量で投与した。以後、isthmusは3.0mmに拡大し、PDAに伴う症状も再燃なく、日齢13に拡大大動脈弓形成術を待機的に施行した。【考察】PDA閉鎖前には軽症と思われるCoAがPDA閉鎖に伴い進行することがあり、CoAの手術適応評価は困難なことがある。本症例はPDAによる肺血流増多症状に対してインドメタシンを投与し、PDA狭小化を図るとともに、PDA閉鎖後のCoA進行をシミュレーションすることができた。このため、PDA閉鎖術のみではなくCoA修復術を含め待機的に行い得た。【結語】CoA進行のリスクがあるPDAでは、新生児期に大動脈弓修復術の適応を判断する上で、インドメタシン投与が有用であると考えられた。