[P03-2] 筋性部心室中隔欠損のある低形成左室に対して手術を回避した一例
Keywords:低形成左室, 動脈管, 二心室
低形成左室に対して内科的治療のみで手術を回避し発育できた一例を経験した。症例は胎児期に心疾患の指摘なく、在胎40週0日、3006g、Ap9/9点で出生した女児。生後12時間で呼吸数60回/分以上、心雑音を聴取し日齢1に紹介搬送。超音波検査で僧帽弁・左室・大動脈弁・大動脈弓の低形成(MVD79%, LVDd74%, AVD73%, isthmus3.14mm)、動脈管開存(3.75mm)、筋性部心室中隔欠損(小)、卵円孔開存、肺高血圧を認めた。動脈管はRL優位で左室の拍出が不十分な可能性があり、BASが考慮された。しかし弁の異形成や狭窄はなく、上行大動脈の血流は順行性で、二心室を目標とした。日齢2に水分率80ml/kg/dで呼吸数100回/分以上、BNP2400→3800pg/mlとなり、肺血流制限のため両側PABや窒素療法が考慮された。しかしLVDd85%と拡大傾向で、左室の成長を期待してドパミン3γ使用下でインドメタシン0.2mg/kgを投与した。投与後、懸念していた大動脈縮窄の顕在化は認めず動脈管は1.3mmに縮小したがBNP4700pg/mlとなり、左心系低形成の影響を考えた。再投与はせず、日齢3に水分率100ml/kg/dに増量しフロセミド0.5mg/kgを単回投与した。左室の拍出が確立されるように水分管理をしながら日々観察を続けた。水分率180ml/kg/dでBNP300→600 pg/mlに増加あり、日齢9よりフロセミド・スピノロラクトン各0.1mg/kg/dを開始した。日齢10に動脈管は自然閉鎖し、日齢16に左心系の発達(MVD87%, LVDd97%, AVD91%, isthmus4.06mm)を確認し、水分制限を解除、日齢21に退院とした。今回、心大血管構造や血行動態を正確に把握し密に観察を行うことが治療において重要であった。