第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

一般心臓病学

デジタルオーラル(II)03(P03)
一般心臓病学3

指定討論者:佐藤 智幸(自治医科大学 小児科学教室)

[P03-4] 乳児期早期にcardiovocal syndromeを発症したVSDの三例

池田 正樹, 関 俊二, 西畠 信 (総合病院鹿児島生協病院 小児科)

キーワード:cardiovocal syndrome , 反回神経麻痺, VSD

【背景】Cardiovocal syndromeは、心大血管疾患患者で二次的に反回神経麻痺による嗄声を呈するものを指し、1897年にNorbert Ortnerが僧帽弁狭窄症に合併した成人例を最初に報告して以来、胸部大動脈瘤や特発性肺高血圧などで合併した報告はみられるが、先天性心疾患に合併した乳児期早期の症例の報告は多くない。【症例】症例1 日齢35 女児:日齢7にVSD(4.79 mm、中欠損)と診断され、フロセミドの内服を開始した。日齢16から嗄声、日齢20から哺乳時のむせこみが出現した。症例2 日齢26 女児:日齢8にVSD(6.5 mm、大欠損)、ASDと診断され、フロセミドの内服を開始した。日齢23から嗄声、哺乳時のむせこみが出現した。症例3 日齢27男児:日齢4にVSD(4.1 mm、中欠損)と診断され、フロセミド、スピロノラクトンの内服を開始した。日齢27の定期受診時に嗄声を指摘された。全例で喉頭ファイバーにより左声帯麻痺が確認され、cardiovocal syndromeと診断した。【転帰】症例1、3はVSDの自然閉鎖に伴い、症例2はVSD閉鎖術後1か月で嗄声が改善した。全例で喉頭ファイバーにより左声帯麻痺の改善が確認された。【考察】いずれの症例もVSDに伴う高肺血流と肺高血圧があり、拡張した肺動脈と大動脈の間で左反回神経が圧迫、障害され、左声帯麻痺を来したと考えられた。また、生理的肺高血圧が改善し、肺血流が増加する生後2-3週に発症し、VSDの根治術や自然閉鎖に伴う肺血流の減少により左反回神経の圧迫が解除され、左声帯麻痺が改善したと考察した。高肺血流・肺高血圧を呈するVSDの症例において、cardiovocal syndromeを合併するものとしないものの違いについては明らかになっていない。【結語】乳児期早期にcardiovocal syndromeを発症したVSDの三例を経験した。