[P07-1] MYH7とSOS1の二重変異を示したNoonan症候群の肥大型心筋症の一例
キーワード:肥大型心筋症, SOS1, MYH7
【背景】家族性肥大型心筋症の原因遺伝子に心筋βミオシン重鎖遺伝子(MYH7)が知られる.Noonan症候群の合併症に肥大型心筋症があり,PTPN11やRAF1,RAT1変異を伴う例で高率に合併する.今回,SOS1遺伝子異常を示したNoonan症候群にMYH7変異の二重変異を生じた肥大型心筋症を経験したので報告する.【症例】在胎35週3日に陣発し,分娩が進行し同日,体重2598gで出生した.出生後,呼吸障害が強く経鼻式持続陽圧換気を必要とした.超音波検査にて心筋が両心室共に肥大し,軽度の右室流出路狭窄が見られた.合併心奇形はなく冠動脈の走行も正常であった.眼間乖離や眼瞼下垂,眼裂斜下などの特徴的な顔貌と翼状頸からNoonan症候群を疑った.心筋の中心性肥大が見られたが左室流出路狭窄はなく,出生時に見られた右室流出路狭窄は自然経過で改善した.左室壁の中心性肥大は新生児期以降も改善せず,中隔で7.1mm(Z-score 4),後壁厚6.1mm(Z-score2.92)と全周性に肥厚した.左室E/e'は5-6,Tei indexは0.3-0.4で推移し,左室駆出率の低下はなく経過している.肥大型心筋症の診断で遺伝子解析を行い,SOS1とMYH7の遺伝子の二重変異を認めた.心電図で心室頻拍はなく,無治療で経過観察としている.詳細な家族歴の聴取により父が肥大型心筋症の疑いとなっているが,家族内精査を希望していない.【考察】肥大型心筋症はNoonan症候群の20-30%に合併し,乳児期診断例は死亡率が15%といわれる.SOS1遺伝子異常例は重症で11%に肥大型心筋症を合併する報告があるが,SOS1遺伝子とMYH7遺伝子の二重変異の既報はなく,対称性肥大を示す発症様式も非典型的であり,文献的考察も含め報告する.