The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

染色体異常・遺伝子異常

デジタルオーラル(II)07(P07)
染色体異常・遺伝子異常2

指定討論者:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)

[P07-2] ARAF遺伝子変異を認めた多発動脈瘤の1例

山下 尚人1, 原田 雅子1, 阪口 修平2, 中村 都英2 (1.宮崎大学医学部 発達泌尿生殖医学講座 小児科学分野, 2.宮崎大学医学部 外科学講座 心臓血管外科)

Keywords:多発動脈瘤, 腹部大動脈瘤, 遺伝子異常

【背景】小児期発症の動脈瘤は稀であるが、マルファン症候群やロイス・ディーツ症候群などに代表される遺伝子素因の関与が強く疑われている。同変異を認めなかった多発動脈瘤の幼児例を経験したので報告する。【症例】4歳女児。家族歴や既往歴に特記事項なし。1歳6か月時に保育園の検尿で尿蛋白を指摘され、白内障、高Ca尿症を認め経過観察していた。3歳11か月時に腹部エコーにて偶発的に腹部大動脈瘤(AAA)が判明した。また全身検索にて両側中硬膜動脈、左腎動脈、両側内腸骨動脈、左上殿動脈にも嚢状動脈瘤を認めた。冠動脈や大動脈弁輪の拡大はなく、上行から下行大動脈にも病変は認めなかった。AAAは短径の最大径が39mmで左腎動脈分枝末梢から総腸骨動脈分岐部にかけて紡錘状に拡大し、下腸間膜動脈は大動脈瘤から起始していた。切迫破裂のリスクを考慮し、4歳6か月時にAAA人工血管置換術を施行した。5歳7か月時にフォローアップのMRIで左腎動脈瘤は15mmから25mmと1年で約10mmの拡大を認め、切迫破裂および腎血管性高血圧のリスクを考慮しコイル塞栓術を施行した。脳動脈瘤も拡大傾向であり、6歳時に全身麻酔下に左中硬膜動脈瘤3か所にコイル塞栓、同動脈と上矢状静脈洞との動静脈瘻に液状塞栓物質による血管塞栓を施行した。現在ロサルタン、カルベジロール内服による血圧コントロールおよびアスピリン内服下に経過観察を継続している。【考察】エクソーム解析では動脈瘤の原因となる既知の遺伝子異常は認めなかったが、セリン・スレオニンキナーゼの1つであるA-RafをコードするARAF遺伝子に新規突然変異を認めた。同遺伝子異常による動脈瘤発症の既報はないが、TGFβシグナル伝達系の異常活性を介して動脈瘤発症に関与している可能性が考えられた。【結語】ARAF遺伝子異常による多発動脈瘤の発症について考察する。