The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

染色体異常・遺伝子異常

デジタルオーラル(II)07(P07)
染色体異常・遺伝子異常2

指定討論者:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)

[P07-5] 進行性の多発性末梢性肺動脈狭窄を呈し、対応に苦慮しているWilliams症候群の1例

澤井 彩織1,2, 永井 礼子1, 谷口 宏太1, 阿部 二郎1, 泉 岳1, 山澤 弘州1, 八鍬 聡3, 武田 充人1 (1.北海道大学 小児科, 2.KKR札幌医療センター 小児科, 3.帯広厚生病院 小児科)

Keywords:末梢性肺動脈狭窄, Williams症候群, 染色体異常

【背景】Williams症候群(WS)は特徴的な妖精様顔貌、末梢性肺動脈狭窄(PPS)や大動脈弁上狭窄等の心血管疾患等を有し、エラスチン(ELN)遺伝子を含む7q11.23領域の複数の遺伝子の欠失により発症する先天異常症候群である。今回、重篤な多発性PPSを合併した症例を経験したため報告する。【症例】17歳男児。出生直後に心雑音を認められ、心臓超音波検査で心房中隔欠損症と診断。外来経過観察中に特異顔貌、鼠経ヘルニア、発育不全を契機にWSを疑われ、Fluorescence in situ hybridization法で7q11.23領域の微細欠失が同定され、確定診断となった。その後PPSが顕在化し、悪化したため7歳時に心臓カテーテル検査を施行。多発性PPS(Gay分類3型)により右室圧は左室圧を凌駕していた。経皮的肺動脈拡張術(PTPA)は施行リスクが高いと考えて断念した。また、原疾患からは自然軽快する可能性もあると考え、経過観察の方針となった。12歳時、肺炎に罹患した際に喀血し、人工呼吸器管理を要した。右肺動脈仮性動脈瘤を確認されたため右中葉切除術を施行。15歳時から経皮的酸素飽和度(SpO2) 90%と低下したため16歳時に在宅酸素療法を導入したが、SpO2 80%台が持続し、呼吸器感染症罹患時にはSpO2 60%台まで低下した。17歳時に心臓カテーテル検査を施行。多発性PPSの増悪、左肺動脈の瘤化を認めた。左肺動脈瘤破裂や他の末梢肺動脈からの出血のリスクが高いと考え、PTPAの適応外と判断した。【考察】WSにおけるPPSは乳幼児期に自然寛解することが多く、治療を要することは稀とされている。また、PTPAによる死亡リスクが高いとの報告も散見され、その適応は症例毎に十分に検討する必要がある。本発表では多発性PPSが重症化した原因について、遺伝学的検討および文献的考察を含めて報告する。また、本症例における重症多発性PPSへの治療介入の是非について、会場の皆様とディスカッションできればと考えている。