[P08-4] 三尖弁狭窄、肺動脈弁狭窄、右室低形成を伴うMowat-Wilson症候群の2歳女児例
Keywords:Mowat-Wilson症候群, 遺伝子異常, 右室低形成
【背景】Mowat-Wilson症候群(以下MWS)は特異的顔貌、中等度~重度の精神発達遅滞を伴う奇形症候群であり、責任遺伝子としてZEB2遺伝子が同定されている。先天性心疾患、てんかん、脳梁欠損、巨大結腸症、腎・泌尿生殖器奇形等その表現形は幅が広い。【症例】2歳10か月女児。胎児期に右室低形成を指摘され、出生後に三尖弁狭窄、肺動脈弁狭窄、右室低形成、心房中隔欠損、動脈管開存と診断した。生後1か月に右BT shunt及びopen Brock手術を施行したが、体重増加に伴いチアノーゼの進行を認め、6か月に左BT shuntを追加した。術後、心房頻拍が出現しアテノロールとフレカイニドの内服を開始した。その後も右室は低形成のままであり、1歳3か月でGlenn手術を施行した。1歳8か月にてんかんを発症しバルプロ酸で加療中であるが、しばしばてんかん発作を繰り返しコントロールは不良である。精神運動発達は2歳10か月現在で運動は寝返りまで、言語は喃語のみ可能である。出生時より眼間開離、尖った顎などの特異的顔貌を認めている。脳梁欠損や巨大結腸症、腎・泌尿器疾患等の合併症は認めていない。パネル解析を施行したところZEB2遺伝子のナンセンス変異(c.268G>T, p.E90Ter)が見出され、種々の臓器症状と併せてMWSの診断に至った。【考察】MWSは本邦で約1000人とされる稀少疾患であり、約6割に先天性心疾患が合併する。ZEB2遺伝子 はzinc-finger/homeodomainを有する転写因子をコードし、神経堤由来細胞の発生・分化に関与する。心房中隔欠損や心室中隔欠損、動脈管開存といった非チアノーゼ性心疾患の報告例が多いが、本症例のようなFontan手術適応となりうるチアノーゼ性心疾患はこれまでに報告がない。【結語】非典型的な先天性心疾患と特異的顔貌や精神運動発達遅滞を伴うMWSの症例を経験した。MWSは報告例が少ない上に本症例ではFontan手術適応となりうる複雑な血行動態を呈しており、慎重な経過観察が必要と考えられた。