[P12-3] Failing Glennにおける病態把握と治療選択に関する検討
Keywords:failing Glenn, Fontan手術, 複雑心奇形
【緒言】Failing Glenn / Fontanのhigh risk因子として,肺血管抵抗の上昇や心係数の低下が指摘されている.実際には房室弁逆流,体肺動脈側副血行路(APCA)・VV shunt,薬剤の影響など様々な因子が複雑に絡み合うため病態の理解が困難な場合もある.今回我々は,前医にてfailing Glennと診断されコントロールに難渋するため当院にて病態を検討し,薬剤調整の上fenestrated TCPCに到達した症例を経験した.【症例】5歳女児.身長102.6cm,体重14kg. 診断は両大血管右室起始,肺動脈閉鎖,両側上大静脈.両側Glenn術後.当院初診時,酸素投与下でSpO2 81%であった.満期出生後上記診断となりBTシャント術を経て,1歳1ヶ月にGlenn術を施行.3ヶ月後のカテーテル検査で平均肺動脈圧(PAp) 23mmHg, 右室拡張末期圧(RVedp) 15mmHg, VV shuntとAPCAの高度な増生を認めた.5歳までの間に酸素療法、薬物治療,APCAコイル塞栓など内科的治療を施行されてきたが,改善が得られずGlenn take downも視野に当院紹介となった.小児循環器内科医と外科医で協議を重ね検討した結果,元来左室の拡張障害を有しており,Glenn後のBTシャント残存とASD自然閉鎖が,左室の容量負荷を招いて肺循環を阻害する直接的な要因となったと考えた.さらに中等度の三尖弁逆流とAPCA,末梢血管拡張薬の多剤使用と利尿剤の使用不足により心室仕事量の増大を惹起しさらに病態を悪化させていると考えた.入院でモニタリング下に利尿剤増量,末梢血管拡張薬の減量を行ったところ,心不全症状は改善し,カテーテル検査でPAp 12mmHg, RVedp 10mmHgまで改善した.fenestrationを加えたTCPC,ASD creation,三尖弁形成術を実施し,手術施行後SpO2は酸素投与下で95%まで上昇,1ヶ月後のカテーテルでPAp 15mmHg, RVedp 12mmHgであった.【結語】Failing Glennの病態を把握するために多角的評価法を駆使すると共に内科外科ともに積極的かつ慎重な議論が必須である.