[P22-4] グレン術後にMarshall静脈の停滞を契機に診断した冠静脈洞開口部閉鎖の一例
Keywords:冠静脈洞開口部閉鎖, Marshall静脈, カテーテル治療
【背景】冠静脈洞開口部閉鎖(CS orifice atresia: CSOA)は非常に稀な先天異常であり、冠動脈造影を行うことの少ない小児では特に診断が難しい。冠静脈血流は、左上大静脈の遺残物であるMarshall静脈から無名静脈(INV)へ、もしくはThebesian静脈を介して右房へ還流する。未診断のまま術中にMarshall静脈の結紮を行えば致死的となるため術前診断が重要である。【症例】女児、MS、Hypo LV、CoAで、1か月でCoA修復を行い、3か月でDKS吻合、RV-PAシャントを行い、1歳2か月でグレン手術を行った。術後のINVからの造影でMarshall静脈が描出されたが、VV短絡として流出せず、血流が停滞していた。そこでMarshall静脈深くにカテーテルを挿入しCSOAと診断した。冠動脈造影で冠血流は遅滞しており、肺動脈~静脈圧~CS圧の低下目的にタダラフィル、ボセンタンを継続した。4歳でフォンタン手術中に右心房からCS開口部を見出しカットバックにて閉鎖解除した。術中のMarshall静脈の結紮は行わなかった。術後はMarshall静脈を介した短絡が増加し、SpO2 90→85%へ低下した。術後4か月時にCS開口部を圧測定、造影、IVUSで確認した。再狭窄のないことを十分に確認した後Marshall静脈(径 7mm)をVP II 12mmで塞栓した。SpO2は98%へ上昇し、PA圧は8→14mmHgとなった。CS開存により冠動脈血流、心機能も改善が見られた。【結語】INV造影からのMarshall静脈の停滞はCSOAを疑う重要な所見である。CS開存後はMarshall静脈はFontan術後の太いVV短絡となるため塞栓、または結紮が必要となる。本症例では再狭窄リスクを考え、数か月後にカテーテル閉鎖を行った。