[P25-1] 胸部仮性動脈瘤に起因する出血に対してステントグラフト留置を行った3歳女児例
Keywords:胸部仮性動脈瘤, ステントグラフト, 外ステント
【背景】小児では極めて稀な胸部仮性大動脈瘤に対してステントグラフトを用いた治療経験を得たのでこれを報告する。【症例】3歳女児。診断は大動脈縮窄症、完全房室中隔欠損症、口唇口蓋裂、重度精神発達遅滞。日齢3に両側肺動脈絞扼術、月齢2に大動脈弓再建術、主肺動脈絞扼術を経て月齢8に心内修復術を施行した。術後、気管軟化症、左気管支狭窄症が顕在化し抜管困難となり、左主気管支に外ステント術を施行した。さらに気管切開を行い退院に至った。術後2年間は周期性嘔吐症で頻回の入退院歴があったが、吐血や喀血の既往はなかった。今回、発熱、咳嗽、嘔吐症状で入院した。入院当日の夜間に気管切開部と鼻腔から突然の大量出血を来たし、出血性ショックとなった。消化管内視鏡検査、気管支鏡検査および造影CT検査により、外ステントに起因する胸部仮性動脈瘤、食道穿孔、気管食道瘻による出血の診断に至った。深鎮静や呼吸管理による鎮静化を試みたが、自発呼吸や体動を契機に容易に再出血し、感染のリスクも高く外科的介入は困難とされた。そこで状態安定化のため、仮性動脈瘤にステントグラフトを留置する方針となった。右大腿動脈からカットダウンにより8Fr シースを挿入し、GORE®社VIABAHN®ステントグラフト(10 mm×39 mm)を病変部位に留置した。留置後は出血がコントロールされ、その結果状態は安定し、後日外ステント抜去術、頸部食道瘻、胃瘻造設術を行った。【結語】小児において外傷後動脈瘤に対するステントグラフト使用報告は散見されるが、胸部大動脈瘤に対する症例は極めて稀である。成人ではグラフト感染による再手術の報告もあり、本症例でも今後の経過に注意が必要であるが、ステントグラフト留置は小児の仮性動脈瘤による出血症状に対して有効であった。