The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

カテーテル治療

デジタルオーラル(II)25(P25)
カテーテル治療5

指定討論者:片岡 功一(広島市立広島市民病院 小児科 / 循環器小児科)

[P25-2] 小児心臓カテーテル検査後に下肢血圧差を契機に診断された大腿動脈血栓症の一例

提島 丈雄, 加藤 健太郎, 阿久澤 大智, 中西 祐斗, 吉村 元文, 吉田 真衣, 沼田 寛, 坂部 匡彦, 桝野 浩彰, 荒井 篤, 渡辺 健 (北野病院 小児科)

Keywords:カテーテル治療, 術後遠隔期・合併症・発達, 川崎病・冠動脈・血管

【症例】10ヵ月男児【現病歴】川崎病性冠動脈瘤に対して,冠動脈・心機能評価目的に心臓カテーテル検査を施行した.右大腿静脈と動脈へのシース挿入時間は約1時間要し,検査は1時間30分で終了した.検査終了1時間後にACT:186secであったため(当院ではACT≦200secでシース抜去),右大腿静脈シース抜去し30分間圧迫止血,次いで右大腿動脈シース抜去し30分間圧迫止血とした.シース留置時間は3時間30分であった.帰室1,2,3時間後では両下肢皮膚色は良好,触診で温度差は認めなかった.検査終了10時間後に下肢血圧左右差(右下肢:84/41,左下肢:103/48mmHg)が出現し,右足背動脈触知微弱を認めた.下肢エコーで右大腿動脈に3.06×2.60mmの血流不良域を認めたため,右大腿動脈血栓症と診断した.ヘパリン100U/kg静注し400U/kg/h持続点滴,ウロキナーゼ1200U/kg静注し2700U/kg/h持続点滴を6時間施行した.診断後7時間で下肢血圧左右差は消失,右足背動脈触知良好となった.下肢エコーでは血流不良域改善,下肢造影CTで血栓形成はなく,下肢サーモグラフィーで温度差を認めなかった.ウロキナーゼを漸減中止しワーファリン1か月間と抗血小板量のアスピリン3か月間内服とし発症5日後に退院とした.退院1ヵ月後,両側足背動脈触知良好であり,後遺症は認めない.【考察】カテーテル検査に伴う合併症の1つに動脈血栓症がある.リスクとして穿刺者の熟練度,シース抜去後の圧迫方法,患児の血管径が考えられる.本例では動脈穿刺に1時間要し,圧迫止血時間は30分であった.本児の大腿動脈径は1.6mm,使用した4Frシースは1.3mmと血管径に余裕なく,血管内膜損傷のリスクがあった.本症例を教訓に当院ではカテーテル検査前にエコーでの両側大腿動脈径測定,カテーテル検査者全員の動脈触知,圧迫止血時間は15分とルーチン化した.本例のように下肢血圧左右差のみで発見される場合があるため,認めた場合は速やかに下肢エコーを施行・評価し,血栓溶解薬の全身投与が望まれる.