第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

電気生理学・不整脈

デジタルオーラル(II)26(P26)
電気生理学・不整脈1

指定討論者:芳本 潤(静岡県立こども病院 循環器科)

[P26-4] 遺伝性不整脈におけるWCDの有用性

松村 雄, 長原 慧, 高井 詩織, 中村 蓉子, 渡部 誠一 (土浦協同病院 小児科)

キーワード:QT延長症候群, 除細動器, 失神

背景2001年に米国において着用型除細動器 (Wearable ICD :WCD)の18歳以上患者への適応承認があり、以後適応拡大が行われ2015年には小児への適応も承認されている。国内でも2014年に保険償還され、使用が開始となり、近年では小児での使用報告も散見されるようになってきた。 今回、先天性QT延長症候群(Long QT Syndrome :LQTS)患者の使用経験を通して、小児患者におけるWCDの有用性を検討する。症例 16歳女性、既往として肺動脈弁下心室中隔欠損に対してパッチ修復術を1歳時に施行している。午後1時頃昼寝をしていた時に室内電話で起こそうとしたところ、唸り声が聞こえた。家人が駆けつけ、ベッドの下にうずくまっている患児を発見した。その後も安静時に強直間代性痙攣のエピソードが有りてんかん疑いとして精査を行った。発作前に胸痛、動悸といった胸部症状があったことから心原生失神を疑いループメモリ式イベントレコーダを施行した。前失神症状に一致して心拍数200bpmの非持続性心室頻拍を認めた。また不整脈イベント時にQTc=500msと延長していたことからLQTSが疑われた。エピネフリン負荷試験では急速投与でQTcの延長があり、Type2様の反応を認め、β遮断薬を導入とした。植え込み型除細動器の導入も提案したが同意が得られず、まずはWCDを導入することとした。考察 本症例は失神の原因は心室頻拍である可能性が限りなく高いと考えられたが、状況証拠のみで失神時の心電図をとらえる事はなかなか難しかった。LQTSのガイドラインを参照すると本症例のICD適応はclass IIaであり、絶対的なICDの適応なく、まずは診断を確実にする方針とした。植込み型心電図モニタの導入を考えたが、心臓突然死の可能性がある本症例では除細動ができるデバイスが必要であろうと考えWCDを導入する方針とした。診断までのつなぎやICDを考慮する期間にWCDを導入するという選択肢を小児でも症例によっては考慮してもいいと考える。