[P27-3] アプリンジンが発作性上室性頻拍予防に著効を示した修正大血管転位症(SLL)・TCPC術後の女児例
キーワード:アプリンジン, 修正大血管転位, 房室回帰性頻拍
【背景】Fontan術後の頻脈性不整脈は心拍出量の低下を招くため、発作コントロールは重要であり、さらに慢性心不全の病態であるため、心機能を低下させない抗不整脈薬の選択が重要である。【症例】修正大血管転位 [ cTGA (SLL)]、心室中隔欠損、肺動脈閉鎖の女児。月齢11にBCPS・心房中隔欠損拡大術・左肺動脈形成術、2歳5か月時にTCPCが施行された。術後、心不全治療としてジゴキシン内服が行われていた。5歳2か月時に初回のPSVTを発症。ATPで容易に停止しre-entry機序と判断した。ジゴキシン血中濃度を慎重に調節したが、同薬のみでの発作予防が困難で、6歳3か月からプロプラノロール内服を開始し4mg/kgまで増量を行ったが発作頻度の減少には至らなかった。9歳4か月時に心機能に配慮しアプリンジンを導入して以降、頻拍発作は全く発生せず良好なコントロールが得られている。【考察】cTGA (SLL)では先天的に前後方に二つの房室結節を有し、その二つの房室結節間でSlingを形成する。一方を順行性に、他方を逆行性に旋回する事で房室回帰性頻拍 (AVRT)を発生し得る。本症例もATP投与で容易に停止することからSlingに起因するAVRTと考えた。アプリンジンは Vaughan WilliamsのIb群薬に分類されるが、他のIb群と異なり上室頻拍にも有効である。小児への使用報告は多くないが、心機能抑制が少なく、QT延長作用も少ないことから、心機能に不安のある症例には比較的使用しやすい抗不整脈薬と考えられる。本症例においても心機能低下やQT延長の有害事象は発生していない。【結論】cTGA (SLL)・TCPC術後のSling形成に伴うAVRT予防にアプリンジンが著効を示した。アプリンジンは陰性変力作用が低く、複雑心奇形術後や心機能低下を伴うPSVT治療に使用しやすい薬剤と考える。