[P27-4] 定期乳児健診を契機に診断した特発性心房粗動誘発性心筋症の1例
キーワード:心房粗動, 頻脈誘発性心筋症, 頻脈性不整脈
【背景】胎児期から乳児早期に発症する心房粗動(AFL)の多くは特発性である。一方、持続する頻脈性不整脈は頻脈誘発性心筋症(TIC)を引き起こすことがある。今回、特発性AFLに伴うTICと診断した1例を経験した。【症例】3ヵ月男児。周産期に異常指摘なく、出生後も哺乳や体重増加は良好であった。定期乳児健診で近医を受診した際に異常な頻脈を指摘され、同日当院紹介受診となった。来院時の呼吸・循環は比較的保たれていたが、誘因なく変動する160~240回/分のQRS幅が狭くP波不明瞭な頻脈、胸部X線および心エコーで著明な心拡大、心機能低下を認めた。明らかな心内奇形はなかった。12誘導心電図記録下にアデノシン三リン酸(ATP)を急速静注し、鋸歯状波を確認できたためAFLと診断した。循環不全が切迫していると判断し、心電図同期下カルディオバージョンを施行。洞調律へ復帰した。心拡大・心機能低下に対して入院後水分制限、ミルリノン持続静注、利尿剤とカルベジロール投与を開始した。経時的に状態は改善し、25病日に自宅退院となった。現在診断後10カ月でAFLの再燃なく、心拡大や心機能もほぼ正常化している。【考察】本症例は洞調律復帰後、心拡大・心機能が経時的に改善した。ウイルス性心筋炎、ミトコンドリア病やライソゾーム病、先天性代謝異常に関する精査には異常を認めなかった。新生児や早期乳児の頻脈性不整脈や心筋症では明らかな循環不全徴候を指摘できない場合があり、丁寧な聴診や身体診察を心がける必要がある。